第69章 【逆ハールート】花見
「あぁ、そっ、それよりさぁ! この失敗作なんだけど……イヤミにあげようかと思うんだけどどうかね?! 最近食べる物ないとか言ってたしっ」
「はぁ? イヤミぃ??」
突然出てきた名前におそ松が嫌悪感を感じた表情になる。
他の兄弟も続き、同じ顔をしていた。
「別にあげなくてもいいんじゃない? あんなヤツなんかに、まぁでも味覚がないって言う所ではこの食事は有難いのかもねぇ? どうする兄さん達」
トド松の言葉に兄弟達は腕組みをして考える。
こちらの無理なお願いで寝ずに作ってくれた残念弁当。
しかも一応失敗作と言えど彼女の手作り。
「……………」
最初に手を伸ばしたのは一松だった。
サンドイッチを手にとるとモシャモシャと食べ始める。
料理の中ではまだマシな部類なので、食べようと思えば食べられる。
「……モグ………ゴクン」
「あぁっ、一松っ! 無理しなくていいんだよ?! 美味しくないと思うしっ」
その一松に続くように何かの覚悟を決めた顔をした五人もそれぞれにもう食材とは言えない物体に手を伸ばし、口に含むとビールで飲みこむようにして平らげた。
「えええぇ━━━━━━━━━━?! マジか! マジなのか!! 自分で作っておいて言うのもアレだけどお腹壊しても知らないよっ?!」
「……うっ、ぐっ……ゴクゴク……っぷは!! だったらせめて食べられるもの作ってきてよねナス子姉っ」
「ほんとだよ、残念すぎて胃が破裂しそうだわっ! けど……他のヤツに食わせるくらいなら、ちゃ、ちゃんと食べるし」
トド松はおにぎりを涙目で飲み込み、チョロ松は卵焼きをほぼ噛まずに飲み込む。
辛そうにしているが、その信じられない好意にナス子の胸は自然と高鳴る。
今までならマズイマズイと言って残飯扱いされ捨てられるのがオチだったのに、恋人になるとこんな漫画のような展開をしてくれるのかと感心すら覚えた。
「そうそう、カワイイ彼女が頑張って作ってきてくれたマズくて食材なのかもわからないモノでも、さすがに食べないのは彼氏としておかしいでしょぉ~」