第69章 【逆ハールート】花見
だが、ナス子はナス子なりにちゃんと考えてはいるようで、大好きな睡眠時間を削ってまで六つ子のために……と頑張った努力だけは認めてやりたいところだ。
「うーん……一人暮らしも長くなるけど、料理出来なくて困ったことって実はあんまりないんだけど……やっぱり基本の料理ぐらいは出来たほうがいいのかなぁ」
実際、今時の一人暮らしというと、食材を買い込み調理をするよりも安い総菜屋や弁当、牛丼一杯だって300円で食べられる時代だ。
かえってその方が安くつくというのも否定は出来ない。
ちゃんと献立を立てて、食材を計算して使い保存方法等も熟知している人なら話は別だろうが、当然ナス子はそんな上等スキルなど持ち合わせてはいない。
「食べられる物を食べられない物にしちゃうっていうのは問題だよね実際……あ、そうだ、ならさぁ、母さんに料理習ったら?」
「松代さん?」
唐突にチョロ松が言い出したことに、ナス子は首を傾げる。
「うん。まぁ決して料理が上手ーとは言えないかもしれないけど、20年以上エンゲル係数の高い我が家の食事のやりくりをしてきてるわけでしょ? 基本の料理ぐらいは当然作れるし、食材の節約術なんかももしかしたら知ってるかも、意外にさ」
「なるほど~」
チョロ松の言葉に確かにと大きく頷く。
世の主婦は偉いなぁ、などと関心をしていたが、そう言われてみればその代表でもあるニートの息子を六人も抱え、食べ盛りな青年達を育てている母親の鏡のような人物がいる事をすっかりと忘れていた。
「お前今連休中だったよねぇ?」
「うん、だって連休取れって言うから有休も仕方なーく使って3連休とりましたよ~だ! ふふん、どうだ! いい彼女だろうっ、はっはっは」
「有給使っただけでいい彼女かどうかはわからないけどね……ただ単に休みたかっただけじゃないの……?」
「う、ううううう煩い一松! それもあるけど私なりに考えてだねっ」
実際の所一松の予想は当たっていた。
花見をした次の日は疲れているだろうと思い、休む。
そして一日ゲームして漫画を読んでひたすら寝る。
3日目は、たまには自分の趣味部屋の片付けもしつつ、残りの時間はゲームして漫画を読んでひたすら寝る予定だった。