第69章 【逆ハールート】花見
年上相手に、相も変わらず年上を扱うような感じではないと不服に思うが、それでも嬉しくなってしまう自分がとても悔しく感じる。
「ファイトだけって言うなコルァ! 自分が悪いのはわかるけどさぁ、いや、う、うん、悪いよね……すーぅ、はーーっ……、ご、ごめん、また次の機会にはちゃんと休みとって時間を割いて作るからあの……っ」
付き合いだしてからというもの、あの口も悪く態度も悪く女子力皆無で残念で馬鹿なナス子は少しだけ六つ子達に素直になった。
本当に少しだけ、ではあるが彼女としてちゃんとしようと言う並々ならぬ決意がそこにはあったのだ。
ましてや相手は六人、そしてそれぞれ一人を除いて個性が強い。
そんな六人を相手にするのだから自分自身ももう少し素直に可愛くなれるようにしようとナス子なりに努力し始めている。
よって、今日はいつもの適当パーカーではなくトド松からプレゼントされた服を身に纏っていた。
「いや……無理しなくていいと思う。ていうか、俺たちに弁当作る機会なんてそうそうないしね……」
「なっはははは、それもそうだなぁ、イイトコ突くねぇいちまっちゃぁ~ん」
おそ松が一松の頭をワシャワシャと乱暴に撫でると、一松は若干ウザったそうに目を細めるが、大人しくされるがままになっている。
「だけどさぁ、そうは言っても、やっぱり彼女の手料理をご馳走になる~ってシチュエーション、憧れなぁい?」
眉をハの字にしてアヒル口を突き出しながら、空を見てそう言うトド松に、呆れ顔をしたチョロ松が浅く溜め息を突きつつ反論する。
「はぁ、もうそんなのは時代錯誤って感じもするけどね、僕は。まぁでも、作ってくれるなら喜んで食べるけどね」
「チョロ松兄さんはそう言いつつも、実は一番そういうのには敏感なくせに……」
「そっ、そんなことないよ!」
各々、やはりカレカノという関係に理想はあるのだろうが、理想はあくまで理想であり、現実にそうなる可能性は極めて低いものだ。
六つ子全員がナス子を好きになったのがまずそれだろうが、理想から遠くかけ離れている相手に、さらに理想を追い求めてしまうというのは悲しい男の性か。