第68章 【番外編】おっちゃん
「うーん、そう、だなぁ。俺の時代はそういうの当たり前にあったし今だって世間的に言われてないだけでそういう事もあるとは思うけどさ……その相手が大企業の息子で俺なんかよりもしっかりしてて彼女を幸せに出来るんじゃないかって思っちゃったんだよね、情けないよなぁ、俺」
瞳は揺れているが涙は流す事はなく話を続ける。
「死んでも今も彼女の事が気になってるのに、この場所から離れられなくて今何をしてるかもわからないし、幸せになってくれてるならそれでいい」
「おっちゃん……もしかしてだけど、その彼女もおっちゃんの事もしかしたら好きだったのかもよ? 可能性の一つではあるけどさぁ、確認もしてないし自分がダメだって思ってたら余計に聞けず仕舞いだとは思うけど、でも少しは行動に出さないとダメだったんじゃ、ないかな」
辛口ピンクの兄ちゃんが優しい言葉をかけてくる事に少し驚いた。
この六つ子は俺とは違い、アプローチなのかはわからないが相手を好きだという事を行動に出している気がする。
記憶の中の松達は確かに馬鹿でゲスでどうしようもなく残念でニートで童貞。
だからといって男としてはナス子を他の男から守ろうと言う姿勢は記憶から読み取れた。
「お前らは俺なんかよりよっぽど凄いよ、死ぬ前にお前らに会っていたら何か変わったのかなー……あ! でも死んだときはお前ら生まれてなかったかも、なははははは」
茶らけて笑う声が小屋に響く、誰もそれに突っ込もうとはせず押し黙ってしまう。
「だから、さ。お前らは俺みたいに後悔をする人生は送って欲しくないって思うよ。どんな結果になってしまったとしても気持ちが届かなければなんの意味もないし」
六つ子はおっちゃんの言葉を聞いて微かに頷く。
確かに自分達はナス子に比べればダメな人間で真っ当な人達が送る生活は全く送れてはいない。
だが、他の男にそのような形で奪われてしまう事を考えると6人は胸を痛めた。
「そろそろ、おっちゃんもこの娘に身体を返してやらないとなぁ」
「え! おっちゃんもう逝っちゃうの?!」
「わははは、そう言って早く姉ちゃんに会いたい癖にー! 十四松はやっぱり優しいヤツなんだなっ、あんがとうな!!」