第68章 【番外編】おっちゃん
おっちゃんはオラついているチョロ松をチラチラ見たが、他の兄弟達に放っておけば治ると言われたので気にしない事にした。
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気づけばどのくらいの時間が経過しているのであろう。
小屋には時計もなく誰も腕時計なども持ち合わせてはいない。
「あー、楽しかったー!! なんか知らんが姉ちゃんのガードの硬さは凄かったけどこんなに身体動かしたのも死んでからじゃ出来ないからなぁ~はっはっはー!」
「こっちは巻き込み事故みたいになったようなモンだっての、結局なんも出来なかったしぃ!!」
ちゃっかり座った時に隣だけはキープしたおそ松はおっちゃんに悪態をつくのだが嬉しそうなナス子の横顔が目に入り面白くない顔をしたまま鼻の下を擦る。
このおっちゃんと過ごす時間は長く感じるがそう長くはないのだろう。
それはそれで楽しいと思う反面、いつものナス子の面影がやはり恋しい。
多分これを思っているのはおそ松だけではないのだが。
「…………おっちゃん、あのさぁ」
「ん? なんだおそ松」
「おっちゃんはさ、なんでその幼馴染に好きって言わなかった訳?」
ポツリと出た疑問は同じ兄弟達も気になっていたようで、シンとして人物に顔を向ける。
「ん~……おっちゃんは小さい頃から臆病者で、彼女に頼ってばっかだった。それとは逆に俺は頼れる所がひとっつもない残念な男だったんだよ。告白は何度もしようとしたよ? でもその度に本当に俺がそれを伝えちゃって関係が変わってもいいのかって悩んでたんだよなぁ~」
「ふーん、関係が変わったら直せばいいだけじゃん」
「そう簡単なモンじゃないんだよおそ松兄さん、俺は……ちょっとおっちゃんの気持ち、わかるかも」
「ありがとう紫のえっとぉ、一松! 結果おっちゃんが小さい頃からずーっと片想いしてただけで彼女は知らない男と家族のお見合いで無理に結婚する事になっちゃってさ~」
「え、政略結婚か何かなの? おっちゃんはその時も何もしなかった訳?」
やっとオラついていたチョロ松も普通に戻り会話に参加している事に安心したおっちゃんは寂しそうな瞳を揺らし膝に顎を乗せる。
その姿はナス子なのだが、一瞬違う姿にも見えた。