第68章 【番外編】おっちゃん
「ヤバイって何言ってんの十四松にいちまっちゃ~ん! まさか……ゆ、幽霊とかじゃないよね?! 別に怖いとかじゃないけど……俺喧嘩強いし!」
「幽霊と喧嘩したって負けるだけだと思うけど」
「わっかんねぇだろそんなの戦ってみないとさぁ……ぁ」
隣に座るナス子とおそ松の目が合う。
今まで考えないようにしていたのだが自分はナス子の事が好きだったと急に思い出してしまい顔が少し熱くなる気がして目を逸らす。
「? なに?」
「べ、べべべ、別に!!」
そのおそ松の反応を見た兄弟達も長男の動揺が伝わるかのように緊張しだしてしまう。
トド松からの爆弾落ちは本当につい先日だった為、まだこのおかしな緊張に慣れない。
だからなのかいつも通り接せられていたのだが、急に意識してしまうと一気に言葉に詰まる。
十四松と一松以外は、だ。
「はー……なんて日だ、私の休みがああ! 後、あの時の猿野郎!! アイツが檻に入ってる所を見てあざ笑ってやりたかったのにぃ!!!」
「ねぇ、ナス子、もしかして動物園に行きたかったのってそれが目的だったんじゃ……」
六つ子の中では一番付き合いの深いチョロ松がハッとして怪しい者を見る目でナス子に視線を向ける。
そこを突かれたナス子は否定する事なくアハハと乾いた笑いを出して頭を掻いた。
「猿、というと前にナス子が襲われた時のあれか?」
「う……そうだよ! あんにゃろうに少しでも仕返しと言うか何かしてやらないと気が済まないよね!! だからこれ持ってきたのに」
バックの中から一本のバナナを取り出すナス子にさすがのカラ松も呆れ顔だ。
とうとう一番優しいと思っていた相手にまでそんな目でみられると言うのは心底心外である。