第66章 【チョロ松ルート】ステップアップラヴァーズ
「……あのさ、思うことがあるなら遠慮なく言ってよ。我慢されるほうが嫌だし、これからお付き合いをしていく上でもよくないと思うんだよね。ああ、言いにくいなら僕から言うね? 僕は今、トド松にムカついてる」
「え、え? なんで?」
「だってそうだろ? いくら幼馴染とはいえ彼氏のいる女の家に遊びに来て、しかも二人きりで、手作り料理まで振舞ってもらってさ、彼氏の僕の立場からしたらいい気分しないよね」
特に怒っている様子ではなく、どちらかというと拗ねているような雰囲気で、それでも淡々とそう話すチョロ松の台詞に、それまで黙って聞いていたナス子が眉を寄せる。
「……トド松は私の心配して来てくれたんだよ。電話の開口一番なんて言ったと思う? ナス子姉、大丈夫? だって……チョロ松、一度家に戻ったでしょ? その時に何かを察したんじゃないのかな、トド松は」
そう言われて、確かに一度家に戻ったとその時のことを思い出す。
部屋にいたトド松にスマホを借り、ライブの詳細を確認してから家を飛び出した、それだけのはず。
なのだが、今こうして思い返してみると、確かにあの時のトド松は何か含みを持っていた気がした。
「……こんなこと、ホントは言いたくないし、別にこれを言ってどうしてほしいってわけでもないんだけど………今日はずっとチョロ松と一緒にいられると思ったのに、急にそうじゃなくなっちゃって……ちょっとモヤモヤしちゃったんだけども……これもね、最初は自分でも気付かなかったんだよ? でも、トド松が気付かせてくれたって言うか……と、とにかく、トド松は何も悪いことしてないよ」
ナス子がトド松を擁護すると、チョロ松はぐっと眉を寄せて不機嫌さを隠そうとしない。
だが、特に反論するでもなく口は閉ざしたままだ。
「だ、だからと言ってライブに行かないで、とかは思わないし、全然行ってくれていいんだけどねっ? うーん、自分でもよくわかんないんだよね感情が……っこれも一種の嫉妬……したってことになるのかなぁっ?」
腕を組み首を捻って自問しているナス子に、不機嫌そうに眉を寄せていたチョロ松が、ふいに顔を少しだけ赤らめる。