第66章 【チョロ松ルート】ステップアップラヴァーズ
先程までの不穏な空気はなくなり、いつもの二人に戻ったことにナス子は安堵する。
「ナス子姉、ぼく帰るよ。遅くまでゴメンね? ご飯ごちそうさまっ」
「えっ? あ、帰る? ごめんね、大したおもてなしも出来ず」
「あのねぇ、今更ナス子姉におもてなしとか期待してないからね? された方が気持ち悪いからっ! グラタン作ってもらっちゃったし、美味しかったからそれで十分だよっ。料理するってのはホント意外だったけどね~」
「ええい、一言多いっ」
「ふふ、それは性分だから。チョロ松兄さんによろしくね~」
じゃあね、と、荷物を持ち、部屋を後にしたトド松を玄関まで見送りドアを閉め鍵を掛ける。
リビングに戻ると、チョロ松がさきほどの位置から一歩も動かないまま立ち尽くしているのが心配になった。
「チョロ松? ねぇ、どうしたの? 機嫌悪いの? にゃーちゃんのライブ見れたんでしょ?」
「……うん、見れたよ。楽しかった」
「そっかそっか、よかったじゃん。なのにどうしてそんな浮かない顔をしているんですか~? お兄さん?」
チョロ松の正面に周り、両手でほっぺたをむにむにと優しく掴んで閉じているへの字口をぐいっと上に上げる。
その手首をそっと掴まれ、ぐっと眉を寄せたチョロ松に、ナス子は首を傾げて笑顔を向ける。
「うはは、いつもみたいにやめろよって言わないんだね」
「別に嫌じゃないからね……ねぇナス子」
「ん?」
「ぼくが帰ってくるまで、トド松と何してたの? いつ来たのアイツ」
チョロ松の質問に、やはり怒っているのかなと顔色を窺うが、そういった様子は見られず本当にただ疑問を口にしているという感じがしたので、ナス子も構えずに普通に答える。