第66章 【チョロ松ルート】ステップアップラヴァーズ
「……おかえり、チョロ松兄さん。随分ゆっくりなお帰りで」
「トド松、お前なんでここにいるんだよ」
余裕そうな笑みを浮かべるトド松とは対照的に、不機嫌さを隠そうともしない態度で質問を投げつけるチョロ松。
その様子を見たナス子が、チョロ松に背後から声を掛ける。
「ちょっとチョロ松、そんな言い方ないでしょ……」
「ナス子は黙ってて」
「チョロ松兄さぁん、そんな言い方ないでしょ? ナス子姉を放ってアイドルのライブに行っちゃったのはそっちなんだから、もっと反省した態度を取るべきなんじゃないかなぁ」
「はぁ?! 放ってねぇし! ていうか、これは俺とナス子二人の事なんだから口出すんじゃねぇよ、あ?」
「こわー……帰って来て早々オラつかないでくれる? ていうか、なんでそんなに偉そうなわけ?」
「あの、ちょ、二人とも……」
何やら二人の間に不穏な空気が流れ、不安そうな表情を浮かべて間に入ろうとするが、チョロ松に腕を捕まれて引き寄せられてしまう。
ぐっと力強く握られた箇所が、少し痛い。
「いでででで、チョロ松っ? ちょっと、なにっ、トド松もどうしたの?! なんで二人とも急に怒ってんの?!」
あえて声を出してこの居た堪れない空気を換えようとするナス子。
二人は未だ無言で睨み合いを続けているが、トド松がすっとチョロ松から視線を外すと、ナス子に向かってにっこりと笑顔を向ける。
「やだなぁナス子姉っ、怒ってなんかないよ? 怒る理由なんてないでしょ?」
「そっ……そうだよねっ、うん……っ」
あからさまにほっとした表情を見せるナス子に、チョロ松もバツが悪そうに掴んでいたナス子の腕から手を離す。
「……俺も別に怒ってるわけじゃないよ。ごめん、怖がらせちゃったかな」
「へ? ううんっ、大丈夫!」
本当は少し怖かったが、否定しておいたほうがいいような気がした。