第66章 【チョロ松ルート】ステップアップラヴァーズ
「う、うーん、うん……そうだけど、チョロ松のアイドル好きは今に始まった事じゃないし仕方ないと言うか…親友からの延長線の恋みたいな、感じだし」
「そこは仕方ないじゃなくてもっと自分の事見て欲しいって言った方がいいんじゃないの?」
いくら好きな相手と言えど、略奪出来るものならしてやりたいとは思うが、トド松にとって大事な幼馴染で姉と言う存在である事も変わらない。
好きな人には普通は幸せになってもらいたいと考える人も多数いるが、さすがにゲスな兄弟の末っ子かつドライモンスター。
心配はしても、二人が幸せになって欲しいという気持ちは全くない。
ただ恋愛に関してだけは自分が一番相談に乗れるのではないかと考えこの場所に来たのも確かだ。
「でもさぁ、それ言っちゃうとなんか自分がチョロ松の事を束縛してるみたいだし……アイツの趣味だって理解してる訳だしさ」
「甘い!! 甘いよナス子姉!! 折角恋人同士になったんだしナス子姉ももっと女の子らしく甘えてみればいいじゃーん」
「お、女の子……らしくですと………」
トド松の言葉にゴクリと生唾を飲み込む。
チョロ松には割と正直話し、いつも頼ったり甘えたりしているハズだ。
これ以上我儘を言ってもいいのだろうかと狼狽えてしまう。
そのナス子の気持ちすら人心掌握術の達人は付き合いの深さもあり、察しているようで更に言葉を付け加えた。
「ま、いくら彼氏が出来たって言ってもナス子姉に女の子らしくとか無理かぁ~……残念なその適当パーカーとかも変わってないしぃ」
「もー、いつもいつも余計な一言を! 優しいのか優しくないのかわかんないなぁっ」
用意された机の上の菓子受けを食べながら二人でお喋りをするのは少し久しぶりな気がする。
寧ろトド松が家にのんびり上がり込んでゆっくりしているのが珍しい。
「いや、優しいかぁ、ムカツクけど」
「あのね、姉さんこそ一言余計なんだけど?!」
「お互い様でしょー? ひひひ」
弟とのやり取りに少し落ち着きを戻し、まるで一松のように笑うと菓子を手にとり一口頬張る。
トド松も少し仕方なそうな顔で同じくチョコチップクッキーに手をつけた。