第66章 【チョロ松ルート】ステップアップラヴァーズ
トド松は電話の後、ナス子のマンションに来ていた。
先程の通話でどちらもチョロ松の事を口に出してはいないのだが、ナス子の元気のない口調や様子が声から伺えると、トド松は断られるかもしれないとも思ったが遊びに行ってもいいか聞いてみた。
弟が遊びに来る事に快くOKを出し、早速遊びに来たトド松にナス子はコーヒーを淹れていた。
「はい、トド松コーヒー入ったよ」
「ありがとう、ナス子姉! 急にお邪魔しちゃってごめんね?」
「んーん、私も暇してたし遊びに来てくれて嬉しいよ」
ミケ子との挨拶を済ませた後、トド松はコーヒーを受け取り向かいに座るナス子を見る。
日頃から隠し事の苦手な姉はすぐに顔に出てしまう。
通話の状態からでも様子が伺えはしたが、顔を見ると明らかにそれは落ち込んでいる表情をしているのがわかった。
「姉さん、今日デートだったんでしょ? さっきチョロ松兄さん一回帰ってきたんだけどさ……その、大丈夫?」
「え!? だ、大丈夫って何が?!」
まだ一口も味わっていない淹れたてのコーヒーカップの中を、ただ覗いているだけの相手に恐る恐る心配の声をかける。
彼氏であるチョロ松の優先度が普通に考えて彼女であるナス子ではないのかという事に、トド松は少しムカついていた。
なんであんなポンコツ三男に自分は負けたのだろうと……。
「普通さぁ、彼女のナス子姉を置いてライブ行く? まだデートの途中だったんでしょ? 今日は遅くまで帰らないとか聞いてたし……全くあの自意識高いシコ松兄さんがそんな大層な立場になったって事自体気に入らないんだけどさぁ~、あっ、相手が姉さんだとしても、ね!」
トド松の言葉を聞きながら、心配をしてくれていてもトド松の辛口は相変わらずだなと心の中で思うが、それ以上に今日のチョロ松の事を考えてしまいその時の事を思い出す。