第66章 【チョロ松ルート】ステップアップラヴァーズ
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「はぁっ、はぁっ……ただいまっ!」
自宅に帰還すると、チョロ松は急いで二階へと向かい、おなじみのアイドル応援セットを取り出し袋に詰め込む。
「あれ? チョロ松兄さん今日ナス子姉とデートって言ってなかった? 随分早く帰って来たね」
ソファに寝転がり部屋に一人、スマホを見ていたトド松が兄の身支度を見ながら不思議そうな顔をして声をかけたが、その兄の身支度の様を見るとすぐに何があったのかは予想出来た。
「トド松、ちょっとスマホ貸して」
「え? 何で? てかさー、普通デート中にアイドルのライブなんて行こうとするぅ?」
「いいから、貸して!」
鬼気迫る兄の表情と出された手にトド松は渋々とスマホを渡す。
どうせ見るのはトゥイッターかアイドルのHPだろうと思いながら呆れ顔だ。
「っああ!! やっぱりだ、昨日の夜に告知されてたんだ……クソ、今日はデートもあったし早く寝たから全然確認してなかった━━━っ」
「……はぁ、可哀想」
「だよね? わかるよね?! あ、時間何時からだっけ」
「可哀想なのはチョロ松兄さんじゃなくてナス子姉ね?」
「は? ナス子? なんで」
ここでチョロ松の間違っているような行いを指摘してもいいのだが、ここはライバルである兄に助言やお叱りを与えるのは自分的に面白くない。
きっと落ち込んでいるであろう片思い中でもある姉のナス子を励ましに行ってやろうとトド松は思い、一瞬言おうと迷った口は違う言葉を吐いた。
「べっつに~、あっ時間もうすぐじゃない?! チョロ松兄さん、早く行かないと間に合わないんじゃないの?」
「え、今何時?! うわっ、もうこんな時間か!! スマホありがとうトド松っ! それじゃ、僕は行くからっっ」
「はいはい~、行ってらっしゃ~い! ……後は、任せてね~♪」
階段をズダダと滑り降りて行くような音と、玄関がピシャリと閉まる音を確認し、トド松はソファから立ち上がりスマホを弄りながら目的の人物に電話をかけるのであった。