第66章 【チョロ松ルート】ステップアップラヴァーズ
「え……緊急ライブ……!? まじで!? にゃーちゃん今日緊急ライブあるの!?」
「はい?」
チョロ松の視線を追うと、視線の先にはポスターがあり、恋人の大好きな地下アイドルである橋本にゃーの緊急ライブ告知が記されていた。
「へぇ、いきなりやる事もあるんだね? あ、だから緊急ライブって言うのか」
「そうだよ! ってか僕のこの情報網でこれ逃してたのは非常に痛い!! っていうか悔しい!!! すっっごく悔しいんだけど?!」
「スマホも持ってないから見逃しちゃったんじゃない?」
完全に落ち込み、慌てる彼氏を宥め背中を優しく叩く。
だが今もその落ち込みは治る気配は感じられない。
「━━━━━━━━━━行かなきゃ」
「ん?」
「ごめんナス子! ちょっと家帰って仕度して来なきゃ!!」
「えっ?! ご飯は?!」
家に帰って夕食を食べて、二人で今日買った漫画やノベルを読みながらダラダラしようと考えていたナス子はキョトンとしながらチョロ松の顔を見る。
既に何かを決意したかの表情をしているチョロ松。
もうこうなってしまったチョロ松はいつも止められない事を知っている為、賛同するしかない。
「わかったよ、もうっ……アイドルってか、にゃーちゃんとトト子にはほんっとポンコツになるんだからアンタはー!!」
「ごめん、ほんっっとごめん! 今度また作るからっ!! じゃあ、悪いけど今日はここで帰るねっ」
そう言い残すと、チョロ松は足早に踵を返しナス子に背を向け家に帰って行く。
一人取り残されたナス子はションボリと肩を下ろし、橋本にゃーのポスターを見て軽く息を漏らしながら呟いた。
「やっぱアイドルには適わないよなぁ~……馬鹿チョロ松、あ~あ、もうちょっと一緒にいたかったなぁ」
嫉妬とまでは言わないが、既に好きから大好きへと変わってしまった相手が、デート中にも関わらず趣味を優先し、恋人そっちのけで帰ってしまうというのは寂しいものだと口を尖らせながらナス子は一人マンションへと帰って行くのだった。