第62章 【一松ルート】デカい猫保護しました
部屋に戻るとリビングでコーヒーを飲んでいたナス子がキョトンと顔を上げたあと嬉しそうな顔をする。
「あ! お帰り一松!! 帰っちゃったのかと思ったっ」
「た、た……ただいま」
先程までの緊迫感は余所に、一松の心が温かくなると途端恋人にくっつきたくなる。
近づききつく抱き閉めるとフワリとナス子の匂いがした。
「一松? またなんか様子変だけどどうしたの?」
背中をポンポンと叩き昨日の一松の様子を思い出しながら抱きしめ返した。
恋人の帰宅に安堵し、幸福な感情がナス子に蘇る。
「…………大丈夫、もう安心だから」
「んん? 何言ってんの?」
「ほらこれ」
少し身体を離すと、ナス子にスペアキーを見せる。
そしてそれを手に握らせるが、すぐに紫パーカーのポケットに突っ込まれてしまう。
「え……?」
「もう! これは一松のでしょ?! 私に返してどうすんのさっ」
「……っお、おおお、俺の、でいいの?」
「逆になんで質問されるかわかんないんですけど?」
心底不思議そうな、若干拗ねたような顔をしたナス子の表情はずっと我慢していた一松の欲を駆り立ててしまう。
「………い、いちまつ、さん?」
「…………仕方なくない? 昨日も今日の朝も一緒に寝てて何もしなかったんだから」
「だ、だからって……当たっ、当たってますがな!」
「へへへ、何が当たってるって? 言ってみてよ、ナス子姉さん」
「~~~~~~っこの!! ドS闇松野郎!!」
「はーい、続きはお布団の中でね~?」
「わわわわっ、ちょっ、鍵取り返した経緯とか聞きたいんだけどぉ?」
「それも終わってから、今はそれより何より……御馳走してよ? こっちも辛口審査、してやるからさ」
抵抗も出来ずズルズルと横に抱きしめられるままあれよあれよという間に寝室へと連れ込まれてしまい、結局夕方までずっとドSな言葉攻めも健在に事を成す二人だった。