第62章 【一松ルート】デカい猫保護しました
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そんなナス子の思いを余所に一松は今おそ松と対面している。
家の中での争い事は避けたい為、外でおそ松が出かけるのを待っていたのだ。
「なんだよ一松~、急に引っ張って来て公園で何かすんの? まさかお前も十四松みたいに野球とか言い出すんじゃないよね?! やんないからっ、俺は今からカラ松の金でパチンコに……」
「あのさぁ、もう一回言うけど鍵返してくれないかな」
「鍵~?」
意を決した一松がおそ松に言うと、おそ松はポケットからそれをとりだしニヤリと笑い見せつけるように揺らした。
「これの事?」
「チッ、それ以外に何があるっていうんだよ」
手を伸ばしそれを奪い返そうとするが、おそ松は身軽くヒラリと交わす。
「おっとっと、一松、悪いけどお前の動きじゃ俺は止められないよねぇ? 今まで一緒にいてそれくらいわかってると思ったんだけどなー」
「そういう問題じゃない。ていうか、このままおそ松兄さんにそれ持たれてたら厄介っていうか……いつアイツに被害が及ぶかわからないし、本気で返して欲しいんだけど?」
「や~だね!! 欲しいなら力づくで来いよ、いちまっちゃ~ん!」
「…………っ」
六つ子にとっての兄弟喧嘩なんて、日常茶飯事。
しかしシリアスモードに入る途端、おそ松を強く感じ、一松も自分から攻撃をしかけるなどという思考が持てない。
「それとも~、カラ松に頼む? チョロ松に相談する??」
一行にニヤリとした表情を崩す事のない長男が、昨日の事はお見通しですとでも言うように口に出すと一松は歯を食いしばった。
「…………そ、それじゃ意味ない、からっ」
「ふーん? 意味ないってどういう事かなぁ? お兄ちゃんわっかんないなぁ~」
「俺が、アイツを守るって言ったんだ……だから……」
「っは! ナス子を守るねぇ~。 ほんと童貞卒業するとこんなにも変わっちゃうのかね人ってさぁ、お兄ちゃん寂しいよぉ」
口を尖らせ目を細めるおそ松に隙はない。
どうしたら勝てるかなんてわからなかったが、ナス子への気持ちだけが、一松の身体を動かす。