第3章 開き直られました
「うーん……」
「記憶喪失も呪いによるものらしいんですが、解呪可能っぽいですか?」
レオナルドさんは、しばらく目を開いたまま私をじっと見――肩を落として目を閉じた。
「ごめん。そっちも無理。『常春の呪い』とからまって、ほとんど一体化してるから、単独で分離は出来ないと思う」
ま、そうだろうとは思ってたけど。
「全く、悪意に満ちた奴もいるものです。何だって私にこんな呪いをかけたんだか」
コントローラーを連打し、敵をバンバン撃ちながらつぶやく。
レオナルドさんの方は、
「呪いを二重に背負った状態でホームレスか。一ヶ月もよく生きてこられたね」
「最初のうちは、一時保護施設を使えたので。後はひたすら隠れて隠れて……まあ最後は男か女かも分からない有様でしたけど」
「生き延びただけ大したもんだよ。女の子って土壇場で強いよね」
感心したようにうなずいたが、
「ん? でも、僕と会ったときは良い服を着てたよね。盗んだの?」
咎めるとかではなく普通に、平然と聞いてくる。
レオナルドさんはレオナルドさんで、結構この街に染まっているようだ。
「いえ……実は最後はマフィアのナンバー2に囲われておりまして」
「ええええええっ!!」
驚きのあまり、のけぞるレオナルドさん。膝の上で寝てたソニック君が、驚いて起きちゃったじゃないか。
「だだだだ大丈夫だったの!? ひどいことは!?……あ、いや今の嘘! 辛いんだったら話さなくていいから!!」
だが私はコントローラーを置き、そっと涙をぬぐう(フリ)。
「残虐非道なマフィアでございました。私は家政婦代わりに毎日、掃除を強要され、塵一つでも落ちていたら、額を強打される頭部を締め上げられる、といった残忍な暴行を……」
「ひどい……! 何て奴だ。大変な目にあったね」
怒りでこぶしを震わせるレオナルドさん。
「他にも山ほどの屈辱を受けました。高いところから落ちてケガをしたら大変だからって、高いところの掃除禁止だったり、一緒に観る映画を選ぶ権利を与えてくれなかったり……」
「信じられない! そんなひどいことを平気で――ん?」
レオナルドさん、ピタリとこぶしを止める。