第3章 開き直られました
レオナルドさんは、今日明日は泊めてくれそうな雰囲気だ。
その間に、仕事と住居を確保しないと。
けど私は元観光客。とはいえ身元を証明する書類は一切合切紛失。ビザも保証人もなし。
こんなひ弱そうな小娘を雇ってくれる店、あるんだろうか。
「い、いやいや。あきらめちゃダメだ。私みたいのを雇ってくれる店、絶対あるはず!!」
決意を固め、扉を開いた。
…………
結論から言おう。入れ食いであった。
ただし。
「『外』から来たの! 大変だったねえ! ビザ? 保証人? いらないいらない!
うちは危険なサービスゼロだからね! 紐ビキニを着て、お酒をつぐだけの――」
「ちょうど人手不足で、君みたいな可愛い子を探してたんだよ~!
仕事? 簡単簡単。男の人とデートして、一緒におうちに行って――」
「何なら今からでも働けるよ? さっそくだけど、おじさんと倉庫の裏にいこうか。おこづかい出してあげるから」
……以下略。
「何っなんだ、この街はっ!!」
公園のベンチに座り、冷めたホットドッグを貪りながら、憤(いきどお)りに震えた。
「……いや、でも私の選び方も悪かったか」
『女の子大歓迎!』『高給絶対保証!』なんて貼り紙をベタベタ貼ってる店に、ろくなもんがあるわけがない。
「かといって、呪いがあるから飲食店は勤められないし……レオナルドさんに相談しようかな」
いつまでも頼りたくないんだけど。
「あ、そうだ。薬を飲まないと」
薬をコークで流し込む。
公園には色んな人が行き交っている。
皆、自分の家や仕事や、居場所があるのだろうか。
今の私には、喉から手が出るほどうらやましい。
「斗流血法シナトベ――『風編み』」
近くでは大道芸をやっていた。見物人も多く、拍手喝采。
こっちまでベンチから一緒に拍手を送りながら考える。
「いいなあ、あんな風に芸が出来る人は」
……ん、待てよ。芸?
『常春の呪い』は確かに呪いだけど、役に立つ一面もある。
ならそれは『呪い』ではなく『特技』にならないだろうか。
私は腕組みをする。ほどなくして、名案が浮かんだ。
…………
その夜。
「許しません!」
「い、いえ、その、でも……」
私はソファに正座し、あたふたとした。
レオナルドさんは怖い顔だった。