第3章 開き直られました
レオナルドさんが、ずいっと私の目の前に来る。
昼間のこともあって、一瞬だけ警戒心が起こるが、
「大丈夫。安全だから」
「???」
すると、レオナルドさんが、糸目をすぅっと開いた。
「っ!!」
光を帯びた、鮮やかな水色の瞳。その目に幾何学紋様が鮮やかに浮かび上がる。
今まで見たことのないほど、美しい光だった。
「……なるほど」
彼は呟く。いったい、この芸術的なまでに美しい『目』に何が見えてるんだろう。
「その病院の先生の言ったこと、本当みたいだね」
「え?」
「君の全身に『蔓(つる)』みたいに呪いが取り巻いてる。
今も先っぽを動かして、君の奥に奥に、浸食しようとしてる状態だ。薬で出来なくなってるみたいだけど」
「私の呪いが『見える』んですか!?」
信じられない。こんな能力者がいるなんて、さすがヘルサレムズ・ロットだ。
「呪いが見えるのなら、呪いを『取る』ことは出来ませんか!?」
「分かった。やってみる」
レオナルドさんが、私の腕に手を伸ばす。
そこに絡みついた、見えない蔓を引き剥がそうとするかのように手を――。
「い、痛い痛いっ!! 痛ぁーっ!!」
あまりの痛みに悲鳴を上げた。皮膚の中に手をねじこまれたような激痛。
このまま引っ張られたら、皮膚がペロリと剥がれそうだ。
「!! しまった!!」
レオナルドさんが飛びすさって目を閉じる。
そして私の痛みもフッと楽になった。幸い腕には何もない。
だが涙目で激しく、浅い呼吸をする。
驚いて起きたソニック君だけが、うーんと身体を伸ばし、レオナルドさんの膝に飛び乗って、大きな目をぱちくり。
「ごめん、ハルカ!」
「いえ、頼んだのは私です……こちらこそすみません」
これでハッキリ分かった。私の呪いは、本当に深くまで浸食してる。
……手遅れだ。
「困った」
ホントに困った。これからどうすればいいんだ。
「ハルカ……大丈夫……ふぁ……」
レオナルドさんが大あくびする。
「……疲れてるのかな。何か、すごく暖かくて……眠い……」
「私の『呪い』かもですね。特に疲れてるときは眠気が増すみたいなんです」
前は密着でもしないと、眠気が出ないはずだったんだけど。
確かに『呪い』は強くなってるらしい。