第3章 開き直られました
大ピンチである。
「へへ。どうする。売る? 食う?」
だが彼らは人ではない異形存在。人間の娘に興味がない可能性も。
「ま、『下』の味を見てからだな」
一匹がヨダレを垂らさんばかりの顔で、私の服に手をかけようとする。あ。ダメだわ。
★GAME OVER★
それ以降、ハルカの姿を見た者はいなかった……。
私がナレーションと共に、人生終了の幕を下ろそうとしたとき。
「ん?」
「な、何だ!?」
突然、悪党たちが動揺し出した。
「え?」
私を羽交い締めにしてた異界人も力を緩め、私はその隙に慌てて腕から逃れた。
「何!?」
バッグを拾い、状況を確認しようとすると、
「こっちだ!」
誰かが私の手をつかんだ。
「!!」
スティーブンさん? もしかして、私を助けに……!?
だけど違った。私の手をつかんだのは、
「走って! すぐ追ってくる!」
その人は私の手をつかんだまま、路地裏を走る。
「待ちやがれ、クソガキども!!」
ゴロツキそのものの叫びと共に、後ろから銃声。
私たちは一目散に大通りに出た。
けど、まだ銃声はする。
「乗って!!」
その人は路地に停めてあったバイクを指した。
「は、はい!」
その人の後ろに無理やり腰かけると、直後に銃弾が一発、車体に当たり、バイクがよろめいた。
けどその人は構わず発進する。
エンジン音とともに、さっきの路地はすぐに遠ざかり、見えなくなる。
「…………」
ホッとした。同時に、緊張と恐怖が遅れてやってきて、身体がガクガク震えた。
「危なかったね。大丈夫?」
「は、はい……あ、ありがとう、ございました……」
お礼を言う声も、涙で震えてる。
「観光客の人? この街は危ないから、引ったくりにあっても絶対追いかけちゃダメだよ」
「……分かってるけど、薬が……」
やっぱり涙が止まらない。
バイクが止まる。信号らしい。
「もう大丈夫だからさ……そんなに泣くなよ、ミシェーラ」
「は?」
知らない名を呼ばれ、思わず素が出る。
「あ……ご、ごめん。間違えた」
その人がちょっと慌てたように言う。
私はちょっと涙を拭いて、命の恩人(パート2)を見る。
「はは……」
困ったように笑う、ピザ屋配達員の格好の人。
くせっ毛の糸目であった。