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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第3章 開き直られました



 あ然呆然。朝になって、私は一人、病院前の階段でボーッとしていた。
 目の前の道路には、人種も種族も多様な人たちが行き交っている。

 私は立ち上がる。

 犯罪者はどこにでもいて、弱った獲物がいないか、目を光らせている。
 私は人ごみにまぎれ、歩き出した。

 片手には大きなバッグ。中には大事な薬が入っている。
 パニックが限界に達し、いっそ落ち着いていたけど、これから先のアテはゼロ。

 一ヶ月前の悪夢再び。
 私はまた、ホームレスに戻ってしまった。 

 脳裏に蘇るのは、昨日の病院での先生との会話だ。

 …………

『進行性なんだよ、この呪い。気がついたら分離不可能なレベルまで深化しちゃうの』

『だ、だって! 私の呪いはすぐ解けるって、スティー……知人も、前の病院の先生も言ってました!』

『見た目だけね。呪いとしては超マイナーな上、非致死性だから、進行性って全く知られてなくてね。
 軽い呪いに見えるし、一見すぐ解けそうだから、放置して解呪手遅れにする人が大半なんだよ』

 ンな、虫歯を放置したのと、似たような感じで言わなくても!!

『安心していいよ。薬を飲んでればこれ以上、呪いは進行せず、今まで通り普通に生活出来るから』

 今の時点で、全然普通に生活出来てないわっ!!

『お連れさん、今晩に迎えに来れる? 無理? じゃ、特例で明日まで部屋を開けてあげるけど朝には出て行ってね。
 薬は二週間分出しておくから、毎日飲んで、足りなくなったら取りに来て。
 いつまで飲むのかって? 一生に決まってるだろ。じゃ、お大事にー』

 どこにでもいそうな善良そうな先生は、言葉のナイフで私をメッタ刺しにし診療を終えたのであった……。

 …………

 私は病院の個室で一晩、どうするかを考えた。
 スティーブンさんに連絡は取れない。
 
 というか……現時点では、スティーブンさんに殺される可能性が一番高い。

『ヘルサレムズ・ロットから出られなくなった? 大丈夫。君をこの街から出してあげるという約束、守るから(死体として)』

 ザシュ!

 ニッコリ笑いながら、私に手をかける姿が目に浮かぶわ!!

 なら他の人を頼れないか……クラウスさんは……ダメか、連絡先が分からん。

 そして朝日が昇り、病院がざわざわし始めた頃、私は起き上がった。

「仕方がない、か……」

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