第2章 告白されました
※『ローマの休日』ネタバレ注意
映画は見終わったけど、寝るには少々早い時間だった。
なので沈黙したスクリーンを前に、私たちはソファでのんびりお話をした。
「好き合ってるのに、一緒になれないって悲しいですね」
子供と笑われるのを承知で、そんな感想をもらした。
「それほどの恋じゃなかったんだよ。何もかも捨てて構わない命をかけてでも添い遂げたい――というほどでは無かった」
まあ時間的にはたった一日の話ですしね。
「そういうものですか」
「そうだよ。だからこそ名作なんだ」
私はスティーブンさんの胸にもたれ、息を吐く。
スティーブンさんは私の肩を撫で、
「安アパート住まいの新聞記者と、いずれ国を継ぐ王女様。
どうやったって一緒になれないし、一緒になっても幸せにはなれない」
「世知辛いものですな」
スティーブンさんはソファに置いてあったブランケットをたぐりよせ、私にかける。
さっきより強く私を抱き寄せ、
「思い出に留めた方が良い恋だってあるさ。
互いの幸せを願いながら、それぞれの世界で生きる。
そんな愛の形もある」
何とも大人な回答であった。
「両思いなだけではダメですか」
「ダメだね。男はまだしも、王女の方は犠牲にするものが大きすぎる。
映画で彼女も言っていただろう? 義務をわきまえているから戻ったのだと」
「…………」
義務。王女の義務。高貴なる者の義務。ノブレス・オブリージュ。
なぜか知らんが、ふとクラウスさんの背中が浮かんだ。
そして彼の隣に立ち、一片の恐れもなく、敵に立ち向かうスティーブンさんが。
私は顔を上げ、スティーブンさんを見る。
この人の背負っている物は何なのだろう。
それは私ごときでは、分かち合えないものなのだろうか。
重荷を軽く出来ないシロモノなのだろうか。
「ん?」
スティーブンさんが私の視線に気づき、嬉しそうに顔を寄せた。
い、いやキスのおねだりで無いんですが……。
「ハルカ。もう少し映画みたいにしてみようか?」
「いいですね」
二人で笑って、映画さながらに、ヒシと抱き合って、映画を真似てキスをした。
ものすごく……顔が熱くなった。