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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第1章 連れてこられました



 そんな『軽い』呪いでも、外の世界では目立ちすぎるということで、ここを出る許可が出されなかったのだ。

 おかげで私は、困窮で死にかけてるわけだが。


「おかしいな。僕の血凍道が不発だなんて……」

 声にショックすらにじませ、私の方に寄ってくるお兄さん。
 私は立つ気力も無く、近づいてくるその人を、ぼんやり見上げた。

 静かな公園の夕暮れ。灯り始めた街灯の中、汚れに汚れた私と、その人の視線が交錯した。

 そのとき。

「――――っ!!」

 目が合った瞬間に、電撃に撃たれたように、その人が立ち尽くす。
 私はよく分からず、やはりずぶ濡れで座り込んでいた。

「……だ、大丈夫かい?」
 その人が私に手を伸ばす。
 いや、あんたがやったんでしょう、これ。

「いえ私こそ、ボーッとしてて……」
 返答としてズレてる気もしたけど、とりあえずそう応えた。
「すまない。今までこんなことは一度も無かったんだが」
「いえ、ホントに大丈夫ですので。すみませんでした」
 やはりズレた答えを返してしまう。

 油断は出来ない。すぐ近くに氷の彫像が見える。
 威勢のいいチンピラを氷漬けにする殺傷能力。
 私のつたなすぎる呪いとは、比べものにならない。

 ヤバい人かもしれない。離れた方がいい。

 しかし、手伝ってもらって立とうとしても、足が……。

 その人は、五徹の疲れ切った顔で、しばらく私をじっと見ていた。

「……君、名前は?」
「ハルカ」

「そ? 僕はスティーブン」

 いや別に、全く、全然興味はないですが。
 私がどうやっても立ち上がらないので、私の前にしゃがみこむ。
 本来凍ってただろう場所が溶けたため、一面の水たまりだった。
 しかし、彼はそこらへんには注目せず、

「君、どこに住んでいるの? 一人暮らし?」
 いや職務質問か。なんでそんなことを聞く。

「……いえ、その……」
 もごもごと呟く。

「ホームレス?」

「うぐうっ!!」

 ぐっさり刺さった!! その事実を何としても認めまいとしてたのに!!

「だよね。服もひどいし、髪もよれよれ。あと――」

 臭う? うん、そうですよ!! 犯罪者を心配しつつ、公園の噴水で下着とかを洗うのが精一杯だったんですよ!!

「そっか」

 スティーブンさんは笑う。

 その笑顔がちょっと怖い気がした。

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