第2章 告白されました
「十秒をなかったことにするのでしたら、あなたの正体の話です。
いつまでもバカにしないで下さい。あなたをずっと見ていて、あなたを取り巻く色んな方とお話して、見当はつきました。私だって、ダテに一ヶ月、この街で生き延びていませんから」
そう言うと、やっとスティーブンさんは少し感心した顔になった。
「そうかい? なら、からかって悪かった。まあクラウスは隠す気ゼロだし、言うほど『秘密』という組織でも無い。勘が良い奴なら気づくか」
と言いつつも、まだ私の本気を図りかねているお顔。
フッ。その顔が数秒後には動揺で歪むと思うと、喜悦の笑みが浮かんでくるわ!
「スティーブンさん……あなたはマフィアのナンバー2でしょう!!」
……。
…………。
「じゃ、そろそろ寝ようか。一緒のベッドでは眠れないけど、部屋までエスコートしてあげるよ」
「何ですか、その『盛大に時間を無駄にした』と言いたげな笑みは!!」
「女の子は両腕で抱きかかえられるのが好きだよね。君は羽のように軽い(気がする)から、やってあげようか?」
「待てコラ、余計な文言つけ加えて、ビシッと決めたつもりか!」
悪魔の両手に絡め取られかけたので、スティーブンさんの脇の下から背中側にまわり、もぞもぞ腰に抱きついた。
「いえいえ、証拠は山ほど挙がっております! その一般会社勤めとは思えない風貌と格好!」
「ヘルサレムズ・ロットなら珍しくないだろ。ここじゃむしろ、普通の会社勤めの方がレアだと思うよ」
私の手をサワサワと握りながらスティーブンさん。
「ブラックすぎる勤務! ビジネスマナーのカケラもない電話口のチンピラ!」
「ヘルサレムズ・ロットなら珍しくないだろ。ここじゃむしろ、普通の会社勤めの方がレアだと思うよ。それとあいつに関しては――あきらめてくれ」
何か知らんが、悟ったような声と表情だった。
「そして一般人にあらざるあの戦闘技!!」
「ヘルサレムズ・ロットなら珍しくないだろ。ここじゃむしろ、普通の会社勤めの方がレアだと思うよ」
私はのそのそと背中を這い上がり、スティーブンさんの耳元で低ーく、
「『ヘルサレムズ・ロットだから』と言えば、全てがまかり通ると思ってませんか?」
「実際そういう街だからねえ」
いやマジでそうなんだけど!!
あと振り向きざま、キスしてこないで下さい!