第2章 告白されました
「さて、そろそろ寝ようか」
一段落した頃合いでスティーブンさんが言う。
「君といると暖かいから、眠くなってきた。今夜はぐっすり寝て、すっきり起きられそうだよ」
そう言って額にキスをした。私はスティーブンさんの大きな手を握った。
「残念ながら、しばらくは一緒のベッドで眠れそうにないけどね」
ふむ。
「ならば今夜は寝かしません」
「是非そうしてほしいところだが、君といると寝てしまう」
「明日は起こしません」
「それはちょっと勘弁してほしいかな」
今日は本当に大変だったんだよ、と苦笑いの家主であった。
むむ……何だか面白くない。
い、いや一緒に眠れないのが面白くないとか、そういうことは無いから! 私も嫁入り前だから!!
何も無かったとしても、男の人と同じお布団で寝たくないから!
えーと、えーと、い、弄られっぱなしというのも、何か悔しいのだ!
「ではやむを得ません。ご迷惑をおかけしたお詫びをいたします」
私はキラッと目を光らせる。
「ん? 何だい? 服を脱ぐならセクシーなランジェリーを買ってあげるから――」
私はテシテシと、うさんくさい青シャツにこぶしをおみまいしようとした。
が、敵は私の全力のこぶしを、笑いながら両手で受け止めやがる。
チッ。その余裕のマスクもこれまでだ。
私はバッとスティーブンさんの膝から飛び降り、人差し指をつきつける。
「スティーブンさん。私、分かっちゃいました。あなたの正体が!!」
「へえ。それはすごいね、ハルカ」
あ。絶対に信じてないリアクション来た。
「フッ。たかが『外』の世界の小娘と侮るのも、たいがいにして下さい」
「そうだ、ハルカ。明日早く帰れたら、一緒に映画でも観ないか?」
すがすがしいほど堂々と、話を流そうとしている!!
「気合いを入れてホームシアターを設置したものの、一緒に観る人がなかなかいなくてさ。
そういえば、君はどんなジャンルが好きなんだ? 希望の映画はあるかい?」
「では『メガ・シャークVSジャイアント・オクトパス』を――」
「映画は僕が選ぶ! 今の十秒間は永久に葬ることにして、さあ寝ようか!」
己のホームシアターに、そんなC級映画は断じて映させないという、決意と殺意の波動が返ってきた。
面白そうなのに。