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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第2章 告白されました


 
「ハルカ、こっちこっち」
 スティーブンさんは珈琲を飲み終わると、ソファに座り、私を手招きする。
「へいへい」
 渋々近寄ると、彼はポンポンと膝を叩く。
 
 恥ずかしいなあ。

 顔を赤くしながら膝に乗ると、満足そうに抱き寄せられた。
 そして敵は、存分に私の頬をむにむにする。
 ついでに髪とか耳とかくすぐってくる。やーめーてー。

「心配しなくても、眠りに誘う能力は、温度調節能力よりは範囲が狭まるだろう。
 現に、君が最初にうちに来た晩は、僕はきちんと朝、起きられた」

「そうですか。周囲を眠らせる能力って、侵入するときとか使い勝手がいいと思ったんですが」
 大人しく、むにむにされるままになった。

「どこに侵入するつもりだ。君も少し、この街にそまってきたか?」
 額を痛くない程度に、ちょんとつつかれる。

 私はハッとする。

「こんなに密着していると、私の能力が発動してしまうやも!!」
「こら。素人の呪いに負ける血凍道じゃないと、何度も言っただろう?」
 むにむにむにむに。
 痛くないとはいえ、あんまりやられると伸びそうだなあ。

「朝は寝坊したくせに」

「不可抗力だ。どんな生物も、睡眠のときは無防備になる。
 軽い睡眠導入効果は予測していたが、『起きさせない』については、さすがに予測が難しかった」
 
「なるほど。ところで腹の肉をつまもうとしないで下さいませ」
「ん? 悪いね。ちょうどつまめそうだったから」

 八つ当たりかコラ!!

「この外道者」
 復讐に、スティーブンさんのお腹に触れるが、

「……何っ!? そんな馬鹿な!!」

 私は目を見開く。
 無駄な肉が……ない!? しかも服越しだが、明らかに割れているっ!!
 ショックを受けつつ、触りまくっているとスティーブンさんはしれっと、

「あいにくと鍛えていてね。それとセクハラ行為はよしてくれないかな?」
「私のお腹を勝手に触っているくせに、その言い草!?」
「僕はいいんだ。家主だから」
「ひどいっ!! あと私の腹が伸びる!!」
「はっはっはっ。どこまで伸びるのかなあ?」
「やーめーろー!」

 支配者の腕から逃れようとし、巧妙に阻止され、攻防戦を続けること十数分。

 気がつくと、二人してソファの上で死ぬほど笑い合っていた。


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