第2章 告白されました
そしてスティーブンさんは、私に話しかける余裕さえ無く、全速力で出かけていった。
私はホッとして、今日の掃除に取りかかったのであった。
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スティーブンさんは、午前零時頃、疲れたお顔で帰ってらした。
リビングに入ってきた家主を、私はいそいそと出迎える。
「おかえりなさい。早かったですね。作戦は成功したんですか?」
「そんなことまで知っているのかい? もちろん成功だよ。
だがクラウスは過剰に気を遣ってくるし、ザップは延々とからかってくるし、今日は散々な目にあったよ」
深々とため息をつく家主。ザップって誰だろう。
私はジャケットを受け取り、ハンガーにかけた。
「サンドイッチが出来ておりますよ。少々お待ちを――」
「ハルカ」
「はい?」
後ろから抱きしめられた。
私は一瞬だけ固まり、
「ああ、ご無体はいけません、旦那様。私には愛する人が!!」
「……『旦那様』はちょっと止めてほしいんだけど。あと愛する人って誰?」
足が宙に浮く。いやらしい感じの抱きしめ方じゃないけど、何だか落ち着かない。
「うーん……スティーブンさん?」
「そこは疑問符にしない。傷つくだろう?」
私の首筋に顔をうずめながら、目元に傷のある人が言う。
「傷つくんですか?」
「当たり前だよ。好きな子にそう言われるんだから」
「ごめんなさい……スティーブンさんです。スティーブンさんが大好きです!」
「よろしい」
で、しばらくギューッとされて。
「ところで、何で抱きしめるんです?」
言ってから、アホなことを聞いた気がしたが。
「ん? 補充?」
「何を補充されるんです」
「そうだな。ハルカ?」
「私って補充可能だったのですか!?」
「仕方ないだろう? 遅い夕食を取って、数時間、君と一緒に寝たきりだ。あれじゃ短すぎる」
「ちょっとちょっとちょっと」
いつの間に、そんな親密な関係が追加されたのだ。
足をバタバタさせ、降りようとしたけど、スティーブンさんは離してくれない。
何だか息づかいも……ちょっと怖い。
「ヤバくないですか? あなたの熱を冷ますためにおつきあいを始めたんですよ?」
「ん?」
スティーブンさんは、ちょっととぼけた風だった。