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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第2章 告白されました



 そしてスティーブンさんは、私に話しかける余裕さえ無く、全速力で出かけていった。

 私はホッとして、今日の掃除に取りかかったのであった。


 …………

 …………


 スティーブンさんは、午前零時頃、疲れたお顔で帰ってらした。

 リビングに入ってきた家主を、私はいそいそと出迎える。
「おかえりなさい。早かったですね。作戦は成功したんですか?」

「そんなことまで知っているのかい? もちろん成功だよ。
 だがクラウスは過剰に気を遣ってくるし、ザップは延々とからかってくるし、今日は散々な目にあったよ」

 深々とため息をつく家主。ザップって誰だろう。
 私はジャケットを受け取り、ハンガーにかけた。
「サンドイッチが出来ておりますよ。少々お待ちを――」
「ハルカ」
「はい?」

 後ろから抱きしめられた。

 私は一瞬だけ固まり、

「ああ、ご無体はいけません、旦那様。私には愛する人が!!」
「……『旦那様』はちょっと止めてほしいんだけど。あと愛する人って誰?」

 足が宙に浮く。いやらしい感じの抱きしめ方じゃないけど、何だか落ち着かない。

「うーん……スティーブンさん?」
「そこは疑問符にしない。傷つくだろう?」

 私の首筋に顔をうずめながら、目元に傷のある人が言う。

「傷つくんですか?」
「当たり前だよ。好きな子にそう言われるんだから」

「ごめんなさい……スティーブンさんです。スティーブンさんが大好きです!」
「よろしい」

 で、しばらくギューッとされて。

「ところで、何で抱きしめるんです?」
 言ってから、アホなことを聞いた気がしたが。

「ん? 補充?」
「何を補充されるんです」

「そうだな。ハルカ?」
「私って補充可能だったのですか!?」

「仕方ないだろう? 遅い夕食を取って、数時間、君と一緒に寝たきりだ。あれじゃ短すぎる」
「ちょっとちょっとちょっと」

 いつの間に、そんな親密な関係が追加されたのだ。
 足をバタバタさせ、降りようとしたけど、スティーブンさんは離してくれない。
 何だか息づかいも……ちょっと怖い。

「ヤバくないですか? あなたの熱を冷ますためにおつきあいを始めたんですよ?」

「ん?」

 スティーブンさんは、ちょっととぼけた風だった。

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