第2章 告白されました
『どうしても起きないようでしたら、彼は今日は休みを――』
『ダメですよ! クラウスさん。今日の突入作戦にはスティーブンさんの指揮がないと!!』
さっきとは別の、元気な声が割り込んだ。
『だが、ミス・ハルカがどれだけ声をかけても起きないそうだ。これでは無理に出勤しても、任務に支障が出てしまう』
『番頭、どれだけ頑張ったんだよ~。若かねえのに、女にイイトコ見せようとすっから、そんなことになるんだって! ぎゃははは!!』
下品な笑い声が聞こえる。さっきのチンピラっぽい。
ん? 頑張ってもがいてたら腕がゆるんできた。
私は無我夢中でスティーブンさんから逃れ、ベッドから離れた。
「クラウスさん! やっと抜け出せたんで、私、スティーブンさんから離れてみます」
『?』
「私の”呪い”に、人を過眠状態にする効果があるのかもしれません!」
ここまでやって起きないのは、多分スティーブンさんのせいだけじゃない。
私の”常春の呪い”で眠気が倍増してる可能性がある。
私が離れることでスティーブンさんが起きれば、推理が正しいことが確定する。
『なるほど。それはありがたい。今後、彼には定時退社と休暇取得を徹底するよう尽力いたします』
「すみません。それでは――」
『ミス・ハルカ。それと、あなたの方はその後、いかがでしょうか。
昨日、彼から気になることを聞いてしまい、少し気にかかっている次第です』
……関係ない私のことを未だに心配してくれるとか、相変わらずの紳士だ。
「大丈夫です。今はひどいことは特にされてませんので!」
『え!? まさか番頭、寝不足でイライラして、女に暴力ふるってんのかよ!!』
『ええ! スティーブンさんって、そんな最低な人だったんですか!?』
電話の向こうから何やらヤジが。
名前も知らん部下二人。耳をすまして聞いてたな。
『い、いや違うのだ二人とも! スティーブンも昨日は十分に反省していた!!』
私に謝って無いけどな。
そしてクラウスさん、あなた、誤解を確定させちゃってます。
「そ、それじゃ、私は部屋を離れますんで――」
スティーブンさんの枕元にスマホを置き、慌てて部屋を離れた。
十秒後。
私の部屋から、スティーブンさんの凄まじい絶叫が響いたのであった……。