第2章 告白されました
スマホの着信が鳴り続けている。
「とにかく出て下さい。私はあなたのスマホをいじっちゃいけないんでしょう?」
スティーブンさんのスマホを取り、夢の中にいる家主に持たせようとした。
「ん……ハルカ……」
「抱きつかないで下さい、スティーブンさん!」
「ハルカ……ダメだ。そんな格好で僕を誘惑しようとしても……僕は……君に、傷を――思い出を、残したくは無い……」
「何、ハンパにカッコいいセリフを仰ってるんですか!
電話ですよ、で・ん・わ!!」
今のセリフ、もっと別の場面で聞きたかったなあ!
ついでに夢の中の私は、どんな格好をしてたんだ。
抱きしめられながら、どうにかベッドサイドテーブルからスマホを取り、彼に押しつけると、寝ぼけながらスティーブンさんはそれを取り、
「ウィ、スティーブン……」
どうにか返答した。
『スターフェイズさん、どうしたんスか? 時間になっても来ねぇから、旦那が心配してましたよ?』
電話の向こうから、ガラの悪そうな声が聞こえた。
うーん、やっぱりスティーブンさんって、反社会集団とかの幹部なんかなー。
雰囲気が、どう見てもカタギじゃないし。
「…………」
え!? 嘘でしょ、また寝た!!
普通なら真っ青になってガバッと飛び起きるとこだろうに。
一体なぜ。ここまでの過眠状態だと、もう一回病院に行った方がいいんじゃないかなー。
仕方なく私が代わることにした。
「すみません、お電話代わりました。スティーブンさんは今ですね――」
『お、女ぁ!?』
説明しようとしたが、すっとんきょうな声にかき消された。
『はあ? ええ!? 女といるのかよ!?』
「大丈夫ですか、ミスター。それでですね。スティーブンさんは今――」
『何だよ、番頭!! この前連れ回してた金髪女と別れたのか!?』
…………。
一瞬だけこみ上げた衝動を、全力で心の奥底に押し込め固く固くフタをした。
うむ。やっぱり私に話さないだけで、恋人だか愛人だかはいるのね。
いやあホッとした!
私がいなくとも、疲れたスティーブンさんを支えてくれる優しい恋人は存在するのだ!!
本当に! 良かったっ!!
「で、何すか番頭って」
『番頭は番頭だよ。てか声若ぇなあ。趣味変わった?』
電話向こうの声は、やはりチンピラっぽかった。