第2章 告白されました
疲れた笑顔、料理をする横顔、ハグしてくれたときの匂い、優しい言葉。
そのたびに心がざわざわする。とても落ち着かない気分になる。
会いたい。
すごく会いたい。
さっき別れたばかりなのにもう会いたい。
顔を見たい。声を聞きたい。お話したい。
……会いに行こうかな。
お部屋に行ってベッドに潜ってお話して。
あわよくば相手の寝顔をたっぷり眺め、熟睡……。
いやダメダメダメ!!
スティーブンさんはお仕事でお疲れなのだ。
休息を邪魔したくない。
それに――。
そのとき、”コンコン”とノックの音がした。
「!!」
私はビクッとしてベッドから飛び起きる。
『ハルカ……その、いいかな? それとも、もう寝ちゃったかい?』
扉の向こうから、ためらいがちな声が聞こえる。
一瞬、寝たフリをしようかと思った。
「あ、はい。起きてますですよ」
『入っていいかな?』
「ダメです」
どキッパリと応えた。
『え……。何でだい?』
スティーブンさんの、戸惑ったような声。
「用件をお話下さい」
留守電のメッセージのような声で言った。
『いや、その、特に用事らしい用事というわけじゃないんだけど……その……何というか』
珍しく歯切れが悪い。
「お帰り下さい」
ちょっと沈黙。
『いや、いいじゃないか。別に君に何かするというわけじゃなくて……』
「とにかくダメです。お部屋に入らないで下さい」
い、いや。さっきまで『会いたい』と思ってたのに、何で部屋に入れたくないんだ、自分。
『と、とにかく、入るよ。ハルカ』
「ダメったらダメです!!」
強く言うと、開きかけてたドアがピタッと止まる。
『何でダメなんだ? 君に何もしないよ。僕から約束を破ったりしない』
「ええと、その……」
今度はこっちが歯切れが悪くなる。
い、言い訳。言い訳! スティーブンさんがお部屋に入らない言い訳は!?
『また体調が悪くなったのかい? ならやっぱり――』
あああ! 敵が攻勢に転じやがった!! 扉は開く寸前!
なので叫んだ。
「今、全裸でスティーブンさんのことを考えながら、自分を慰めてる最中なんで入っちゃダメなんです!!」
『…………』
一瞬の沈黙の後、盛大な音を立て、扉が全開となった!!