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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第2章 告白されました



 彼はトレイの皿に何かのせている。
 ミルクが入ったコップ二つと、後は……。
 彼はその皿を私に近づけ、

「よし、解凍完了。ご苦労さん」
「へ?」
「へえ、すごいな。水気まで切れてる。じゃ、ちゃっちゃと済ませよう」
「ん?」
「ローストビーフだよ。今、冷凍庫から出してきた」
「!!」

 そしてスティーブンさんはご機嫌で、私の隣に立って、素早く野菜を切る。
 私がバゲットにバターとマスタードを塗り、そこにスライスオニオン、トマト、サニーレタス、さっきのローストビーフを手早く挟んだ。

「はい、完成」
「おおおお!!」

 五分前まで何もなかった場所に、ローストビーフサンドが!!
 
「君のおかげだよ。ローストビーフは20度くらいが一番美味いんだ」
「何という時短!!」
「その通り。さ。とっとと食べてさっさと寝よう」
 折りたたみの椅子を二つ出し座る。
「いただきます!!」
 私も座って、空きっ腹に大急ぎでローストビーフサンドを詰め込んだ。
「よく噛みなさい」
「はーい」
 もぐもぐ食べながら、ミルクを飲むスティーブンさんを見た。彼は微笑み、
「使いようによっては、便利な能力かもしれないな。一瞬で解凍が終わるし、粗熱も取れる」

 なるほど。使い道もあるんだ。能力を疎ましく思い始めていただけに、目からウロコだった。

「食事は生活の大事な一部なんだから、楽しまないと」
「そうですね。ありがとうございます!」
 二人で笑い合う。

 胸の奥で『トクン』と、何かが高鳴った。

 …………

 何だかんだで食べ終わったら午前四時近い。
「洗い物は君に頼んでいいかな。昼間でいいから」
「もちろんです、お任せ下さい!」

 スティーブンさんは、ものすごく気だるげだった。
「僕はシャワーを急いで浴びてから寝るよ。ハルカも、次はちゃんと寝るんだよ」
 そう言って、私を軽くハグし、またキス。
「おやすみなさい、スティーブンさん」
「君もね、ハルカ」
 シャワールームに向かう家主に手を振り、私も自分の部屋に入った。

「はあ……」

 ベッドに入り、ベッドサイドのランプだけつけ、ルームライトを消す。
 はぁ。これでやっと眠れる。

 私はお布団をかぶり、目を閉じた。
 
 ……。

 …………。

 眠れぬ。スティーブンさんのことばかり、頭に浮かんでしまう。

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