第2章 告白されました
深夜三時。スティーブンさんは明日……というか『今日』もまた、定時での出社だという。
それでも愚痴一つ言うでも無く『仕事だから』と大人な返答。身体、大丈夫かなあ。
それでもスティーブンさんは私の前にかがみ、両肩にそっと手を置く。
触れるだけの優しいキス。
「ハルカ。ただいま」
疲れた顔に笑顔。スーツから、少しだけ硝煙の匂いがした。
「おかえりなさい」
私も笑った。
私はスティーブンさんに手を引かれ、キッチンに向かう。
胃のことを考えたら、そのまま寝た方がいいと思うんだけど、『どんなときも、食べられるときは食べておかないといけない』と、戦場哲学のようなことを聞かされた。
……職場で水分だけで過ごしたくせに。
スティーブンさんはホコリの取れた廊下を満足そうに見、
「ありがとう、ハルカ。すっかり家がきれいになったよ」
いえいえ。スティーブンさんお持ちのヘルサレムズ・ロット最新式クリーナーの賜物(たまもの)っす。
「たまった洗濯もしてくれたんだね、本当に助かるよ」
「でもアイロンが使えなくて」
「いいよ。それくらいは僕がやる」
まだまだ中途半端なハウスキーパー。
ため息が出る。
そして私用の第二キッチンの前に来た。そこでスティーブンさんは、
「ちょっと冷蔵庫に行ってくる」
彼は私に、出しておく食材の指示をし、本キッチンに向かった。
「はーい」
私はあくびをしながら、第二キッチンに入る。
そこはちっちゃな台所のような場所だった。違うのは、冷蔵庫やガスコンロがないこと。
何を作るんだろう。今から調理とか、面倒くささしかない。
眠気でボーッとしながら、バゲットを袋から出す。
そこに、視界の端に電子レンジが目に入った。
昼間は何とかこの文明の利器を使おうとした。
しかし、どうしても常温になってる。
常温でも美味しい食べ物はいくらでもある。
ただ調理に一切『電気やガスが使えない』となると、調理難易度は一気に上がる。
「はあ……簡易宿泊所とかホームレスの時はそこまで気にならなかったけど、この常春体質って、厄介ごとしかないし」
やっぱり『呪い』なんだなあ。
「そうでもないさ。良いこともある」
「うお!」
後ろにスティーブンさんがいた。