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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第2章 告白されました



 スティーブンさんについていきながらキョロキョロと廊下を見る。
 改めて見ると、映画みたいに広くてきれいな部屋だ。
 ……だが隅にホコリがたまってるな。
 今日という今日は、掃除をさせてもらわねば。


 そしてリビングに行くと、テーブルに朝食が用意されていた。
 サンドイッチにサラダ、シリアルとアイスカフェ・オレ。

「美味しそうですね!」
「ありがとう。でも食事における温度の大切さを考えさせられるね」

 スティーブンさんが難しいお顔。
 私は周辺のものが、何でもかんでも常温になってしまうので、スティーブンさんもメニューに悩むらしい。
 よく考えればサラダとかデザートとかをのぞき、食べ物は基本、温かいっすな。

「だから別々に食べていいって言ってるのに……」
「それはダメだ」
 スティーブンさんはきっぱり言う。

「一緒に暮らしてるんだから、一緒にいるときは同じものを食べよう」
「……はい」

 改めて言われると、ちょっと照れる。

「――が、珈琲(コーヒー)だけは許してほしい」
「は?」

「熱くてきつめのやつが、飲みたくなるときがあるんだ。そういうときは――」
「どうぞどうぞどうぞ! 私は全く気にしませんからっ!!
 飲んでらっしゃるときは、近づきませんから!!」

「悪いね。ハルカは良い子だ」
 はいはい。サンドイッチ、うまうま。
「美味しいです、ホント美味しいです、美味しいです」
 語彙(ごい)が足りず、五、七、五調に褒める私を、スティーブンさんは楽しそうに見ていた。

 でも珈琲かあ……。

 私がスティーブンさんに熱い珈琲を入れられる日は、来ないんだろうなあ。

 サンドイッチを食べながら思ったのであった。

 …………

 食後、スティーブンさんは髪を整え、ネクタイを締め、ジャケットを羽織る。
 ソファでボーッとそれを見ていると、彼は私の視線に気づきフッと笑う。

「ん? 何だい? 惚れ直した?」
「いえ、うさんくさいなーと……いだだだだだっ!!」
 猛烈な締め上げを食らい、悲鳴を上げる。

「聞こえなかったなあ。もう一回、言ってくれるかなあ?」
「カッコいい!! 超がつく男前!! 素敵です、スティーブンさんんんっ!!」

「分かればよろしい」

「はい……」

 暴力に屈し、私はしくしくハンカチを噛んだのであった。 

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