第2章 告白されました
…………
「ん……」
誰かに頬をつつかれ、ベッドの中で身じろぎする。
「ハルカ。朝だよ。そろそろ起きてくれ」
耳元で優しい声。
「ん~」
しかしまだ眠い。『いやいや』をして、布団を頭からかぶる。
「ハルカ。良い子だから」
そっと布団を剥がされ、頬に手を当てられ、キス。
「まだ眠いです……あと五時間……」
すると苦笑する声。
「仕方が無いな」
額に何かが近づく気配。
これは……お目覚めのキッスというやつ?
半分寝ながらドキドキした。
「よし……」
いや――違うっ!! これは殺意の波動っ!!
「っ!!」
DVの恐怖にさらされた身体は、ガバッと起き上がる。
私はハァハァと大きく肩を上下させ、今にもヘッドロックをしようとしたスティーブンさんを見上げた。
「この人でなしが」
「起きない方が悪い。ほら、朝ご飯が出来たから、とっとと起きて顔を洗って来なさい。リビングで待ってるから」
コツンと指の角で額を叩かれる。
「はあ~い」
仕方なく、新品のパジャマでベッドから下り、ピンクのスリッパに足を突っ込んで、のそのそと洗面所に向かった。
何か、変な感じ……。
昨日はソファで寝たはずだけど、いつの間にか客室に運ばれてた。
ついでに言うとスティーブンさんはご自分の寝室で普通に寝たっぽい。
『お互い最悪の結果を回避するため、おつきあいする』という意味不明な結論で落ち着いたけど、ホントにそれで良かったのかな。
顔を洗い、鏡の中の自分を見る。
数週間前は、悪臭漂う臨時宿泊所で目覚め、今日こそはこの街を出られますようにと祈ってた。
何日か前までは路上で寝てて、朝を無事に迎えられたことに安堵し、後はずっと食べることだけを考えてた。
数日前は床に座って朝を迎え、殺されるか売られるかと怯えてた。
その後は熱でうなされてた。
今日は……普通の朝だ。
安全で広い家、やわらかいベッド、ご飯。
「どうしたんだい、ハルカ」
私が遅かったからか、スティーブンさんが来た。
ゆったりしたラフな部屋着、少し寝癖の残る頭。日の光の中では目立つ、目元の傷。
「いえ、何だか夢みたいだなと思って」
「そ?」
スティーブンさんがかがんで、私の髪に口づける。
「おいで。朝食にしよう」
「はい」