第2章 告白されました
「何が『よしっ』なんですか! スティーブンさん! ツッコミは!? 物理的制裁は!?」
しかしスティーブンさんは抵抗など全く意に介さず、私の首筋に口づける。
「大丈夫。君は何もしなくていい。全部、僕に任せてくれ。痛いのは最初だけだから」
「会話して下さい、酔っ払いぃっ!!」
どうにか渾身の力で起き上がり、襟首をつかむ。
「一目惚れなんて! ちょっとつきあってれば、すぐ熱が冷めるでしょうが!!」
今は熱に浮かされた、冷徹な瞳を睨みつける。
「あなたが一目惚れから我に返って! 私がどこにでもいる、珍しくも何ともない小娘だとあなたが気づけば解決でしょ!?
私はめでたく解放!! 殺される必要も無くなるんです!!」
熱しやすく冷めやすい。
悲しい現実、一目惚れは早い段階で別れる確率も、また高いらしい。
スティーブンさんは半分酔った目でしばし考え――。
「ああ!」
いや今気づかないで下さいよ、いい歳した大人がっ!!
「……分かった。僕もちょっと、大人げなかったみたいだ」
大人げないどころじゃなくて、殺人未遂だから!!
敵はそのまま、私を抱きしめながらソファに横になる。
「僕には守らなければいけないものが多すぎる。
だから、突然降って湧いた強烈な感情が――ただ怖かったんだ」
「…………」
「ごめんよ。今日のこと、自分でも本当にどうかしていた。
クラウスの目の前で、君を見殺しにしようとするだなんて」
またクラウスさんか。何だかんだで、どんだけ大事なお友達なんだ。
いつか聞きたい気もするけど、そんな深い関係になる前に、私は飽きられて解放されるか、飽きられず殺されるかだ。
「君は暖かいな。君といると……眠くなる」
スティーブンさんは私を抱きしめながら小さく、あくび。
「春ですからね」
常春の呪い。色々厄介だけど、人を眠りに誘う効力もあるみたい。
「ハルカ。キスしていいかい?」
「もう私たち、恋人でしょ?」
好感度を下げることが目的の恋愛ってのも、何だか変だけど。
「好きだよ」
そう言いながら触れるだけのキスをされた。
私は髪を引っ張ってうなずき、刹那の恋人を抱きしめた。
胸の奥に産まれたほんの小さな痛みは、無視することにした。