第2章 告白されました
「つまりは美少女一人の存在が、強大な組織の崩壊のきっかけに! 私って何て――」
「ハルカ。ちょっと頭を貸しなさい」
慈愛あふれる笑みで手招きされ、
「いだだだだだだだ! 冗談冗談冗談! イッツアジョーク!! 二度と生意気は言いませんから!!
だからスティーブンさん! 脇で締め上げるの止めて下さいーっ!!」
容赦のないヘッドロックに、頸椎が逝くかと思った。
解放後、私はすっかり昇天し、スティーブンさんの膝の上で伸びた。
「言っておくが、うちは強大な組織でも何でもない小さな会社だからな。
あいつが社長をやってる時点で、儲かりそうにないと分かるだろう?」
……さらっと嘘をつくなあ。
高所得者層向けと思しきこのアパートメント、執事を連れたクラウスさん、何より一般人にはありえない戦闘技。
それなりに事情があることは確実だ。
でも私は、見え透いた嘘を糾弾出来る立場ではない。
スティーブンさんもそれが分かっていて、嘘をついてくる。
惚れた・惚れられたの関係な割に、私たちの間には絶対的な上下が存在している。
「じゃあクラウスさんのことは、さておきます。私が目障りでしたら、とっとと『外』に放り出せば良いでしょうに。
呪い自体は、解くのが面倒なだけで、やろうと思えばすぐ解けるんでしょう?」
「…………」
スティーブンさんは返答しない。
…………。
「ま、いいや。ここにいれば遊んでていいし、呪いのおかげで冷暖房いらずだし!」
お膝の上でゴロゴロすると、スティーブンさんは私の髪をいじってくる。
「誰がタダで置いてやるといった。掃除しろ、掃除」
「私、殺されるのですか?」
「いずれは殺さないといけない」
うなじを撫でる指が、少し怖い。
「なぜに、そこまで追い詰められてらっしゃるのです」
「大切な物は作らないと決めている。感情が強ければ強いほど、僕は鋭利な刃から遠ざかっていく。最も大事な瞬間に迷いたくはないんだ」
全く意味が分からない。
でも追及することも茶化すこともためらわれるほど、スティーブンさんの瞳は深いものを宿していた。
「そう思っていたけど、あのとき――僕の非情な決断を迷わずに受け入れた君を見たら、もう自分が制御出来なくて……」
健気なわたくしに、トドメを刺されたらしい。