第2章 告白されました
イジりすぎたがため、スティーブンさんのご機嫌がすっかり悪くなってしまった。
なので肩を抱き寄せられたままスティーブンさんにもたれ、愚痴……もとい、お話を傾聴することにした。
「色々と調べた。君が主観操作系の能力を発動しているのでは無いかとか。敵がよこした、毛色の変わったハニートラップじゃないかとか」
『毛色の変わった』とか言うなっ!!
……まあスティーブンさんなら、男か女かも分からんホームレス少女より、グラマラスな美女の方が百万倍お似合いだろう。
「だけど、どれだけ調べても何も出なかった。途方に暮れたよ。どうすればいいのかと」
さよか。
「本来なら、その場で消すところだ。だが偶然にもクラウスが君の存在を知ってしまった。
あいつのあの性格だ。行き場のない君を気にかける。
突然姿を消せば、確実に探そうと申し出るだろう。そうなったら――」
あれは確か、この家に来た翌朝のことだ。
そのときスティーブンさんは、私の預け先を探そうと色々電話をしてくれた。
そのとき、たまたまクラウスさんからかかってきた電話を私が取ったのだ。
……まさか、あの一本の電話が私の命をつなぐことになろうとは。
「クラウスさんに弱みでも握られてんですか、スティーブンさん?」
いっそ嫉妬するほどに、存在がデカすぎるのだが。
「てい」
「うぎゃあああ!!」
久しぶりにデコピンを食らい、ソファの上で悶絶した。
「あいつが人の弱みを握って、それを盾に脅す奴に見えるか?」
え? そういう理由で怒ってるの? だが敵は大真面目だ。
「大変失礼いたしました。謹んで前言を撤回させていただきます」
ソファにちょこんと正座してお詫びする。
スティーブンさんは、鷹揚(おうよう)にうなずき、ほんのり満足そう。
「分かればよろしい」
……まあ普通に親友ということなんだろう。
少し会っただけでも分かるくらい、クラウスさんはまっすぐすぎるお人だ。
スティーブンさんはクラウスさんとの友情を破綻させたくはない。
ホームレスの女の子を、邪魔だからという理由でアッサリ殺す『裏』を見せたくないんだろう。
「気持ち悪いことを考えているんじゃないだろうな? あいつと僕の関係の不安定化は、組織瓦解の端緒(たんしょ)にすらなりかねない。単なる危機管理上の話だ」
どうだかなあ。