第2章 告白されました
「ですがクラウスさんに、あなたが錯乱したことを通報しませんと」
「錯乱していないし通報とか言うんじゃない!」
「錯乱でしょ。だって出会って数日ですよ? 昨日今日で、そんな『積年の想いを打ち明けました』~みたいに言われてもですね」
少女漫画だって、一週間は焦らすわ。
「仕方がないだろう!! 気がついたらそうなってたんだから!」
缶をドンッとテーブルに置き、怒鳴る。私はよしよしと背中を撫で、
「ダーリン、若い頃はそういう後先考えないフォーリンラヴがあるものですよ。
でもですね。それは脳が作り出した錯覚。若さ故の暴走なんです。
距離をとって冷静になり落ち着きましょう。そうすれば大人になったときに、いい思い出になりますから」
「ガキ相手にするみたいに諭すんじゃない! あと『ダーリン』止めろっ!!」
うん。私みたいな小娘がスティーブンさんに一目惚れして、即日コクって諭される方が、あるあるなのだろう。
これじゃ完全に立場が逆だ。
スティーブンさんは己の醜態に顔を赤くし、二本目の酒を開ける。
落ち込んだようにうなだれながら、
「君に、こんなみっともない姿をさらすつもりはなかったんだ……」
確かに。見た目も行動もカッコいい人だろうに、今のとこカッコいい姿の方がレアという、とんでもない事態になってる。
「君にわざわざ指摘されなくとも『これは一時の錯覚、気の迷い』だと僕はすぐに決断を下した」
はー、とため息。
「心と身体は切り離せる。事故を装うか、時期を見て君を始末し、クラウスには君が『外』の世界に帰ったと伝える。それだけで終わる簡単な話だったんだ」
「こう言ってはアレですが、全然切り離せてなかったですよね?」
「だろうね。油断した。久しく無かった高揚感に、完全に舞い上がっていた。
君の笑顔が、声が、僕に向けてくれる一挙手一投足が嬉しくて……いつの間にか君がずっとこの家にいる前提で準備をしたり、寝顔を撮影したり……」
「こんなに甘酸っぱさを装って、盗撮を告白する方は初めて見ました」
するとスティーブンさんはグイッと私の肩を抱き寄せた。うわ! 食べてる最中だって!
「なのに、夢中になってるのは僕だけと来た」
だから! 出会って数日でしょうが!