第2章 告白されました
「だからこそ、僕は君にイカレてしまったのかもな」
…………。
ソファの肘に頬杖つき、自虐的に笑うスティーブンさん。
私はそれを、たっぷり三十秒は眺め、
「お疲れなのよ、ダーリン。そろそろお休みになったらいかがかしら?」
「ダーリンとか言うな。いきなり口調を変えるんじゃない。それとこっそりスマホを盗ろうとするな」
後ろのポケットに手を伸ばそうとした私を、ペシッと叩くスティーブンさん。
「盗ったりしませんよ。クラウスさんに通報しようかと」
「通報とか言うなよ! 言っておくけど、僕かクラウスか、その他登録した以外の者がスマホを操作しようとしたら、すぐに連絡が行くようになっているからね?」
「どこにです? SWAT(特殊警察部隊)ですか?」
わくわく。
「そんなもの、ここでは何の意味もない。僕個人の関係の者さ。とにかく止めておきなさい」
「えー」
渋々スティーブンさんから離れると、彼は自虐的に笑う。
「ほらね。そういう反応が返ってくると思ったんだ」
他の紙袋をゴソゴソ開けると、中から酒が出てきた。
彼がそれを開けようとしたので、
「ダメー」
そっと手を押さえる。
「おやすみ前に飲んだくれるのは、良くないですよ、ダーリン」
「だからそういう言い方をするのは止めろ」
スティーブンさんはニヤッと笑い、
「心配しなくとも、そこまで度を超して飲まないし、君に手を出したりはしないよ」
そう言ってプシュっとプルタブを開け、酒をあおる。
そんな横顔にも、つい視線が引き寄せられる。
とりあえず、すぐに銃でズドン、という展開では無さそうだ。
なのでいただいた高級ケーキを、至福の思いで噛みしめながら言った。
「あなたが私の美貌にまいり、身も心も奪われたことはよーく分かりますが」
「全然分かっちゃいないし、大いなる見解の相違が発生していると思うね」
「容赦ないっすね」
言われんでも、己の容姿の平凡さは自覚しておりますがな。
だから余計に分からない。
「だが、僕は君が好きだ……だから、スマホを盗ろうとするんじゃない!」
人差し指で私の額を押しながら、スティーブンさんは顔を赤くする。
アルコールのせいだけではなさそうだった。