第1章 連れてこられました
すると悪党はアッサリ銃を下ろし、
「そうかよ。なら仕方ねえなあ――」
空気が緩んだと思った一瞬。
「てめえら、まとめて死ねっ!!」
悪党がふところから爆弾を取り出した。
――あ。
そのとき。私の目がスティーブンさんと一瞬合う。
――ごめん。
――いいですよ。
「っ!!」
次の瞬間に、クラウスさんとスティーブンさんが飛び出した。
「111式 クロイツヴェルニクトランツェ【十字型殲滅槍】!!」
「ランサ・デル・セロ・アブソルート【絶対零度の槍】!!」
クラウスさんの十字の攻撃が敵を串刺しにした。
一瞬遅れスティーブンさんの技が、起爆寸前だった爆弾を死体ごと氷漬けにした。
私は凍結前にクラウスさんに助け出され、抱っこされ、スタッと地上へ。
「お怪我はありませんか? レディ」
「い、いえ、ありがとうございます……」
そうは言ったものの、足が震えて支えてもらえないと立っていられない。
クラウスさんは私を抱き支えながら友人を見、
「見事だった、スティーブン」
「いや、一瞬だけ動きが遅れた。もう半瞬遅れたら爆弾が起動して、ハルカの命は無かっただろう。本当にすまない」
「だが彼女の命は助かった」
「そうですよ。ありがとうございます、スティーブンさん」
私は微笑んだ。
スティーブンさんは目を丸くして私を見、
「…………そっか」
と、微笑んだ。
一瞬遅れ、ファンファンとサイレンの音が鳴り、武装したポリスーツがドヤドヤと路地裏に入ってきた。
「またてめえらか!!」
どっかで見たことがある気がしないでもない、片目が隠れたトレンチコートの男がいた。
彼はすぐ、スティーブンさんとクラウスさんに食ってかかる。
「まあまあ。警部殿」
「観光客を拉致し、オークションで人身売買をしていることを自白しています。食人禁止合意違反の疑いも濃厚かと」
「何だと!?……といっても半分以上、口きけねえ状態じゃねえのか? こいつら」
ワイワイガヤガヤと、野次馬も加わって辺りは騒然となる。
「ミス・ハルカ。あなたはお車へ。証言は他にいくらでも取れます」
クラウスさんが私に言う。
「そうだな。悪いけど戻っててくれ。少しかかりそうだ」
とスティーブンさんも苦笑い。
義憤から始まった、とんだ大捕物だった。