第1章 連れてこられました
私はホームレス時代、食べ物目当てにこのあたりで数日寝泊まりした。そのとき、こいつらに半日ばかりつかまったのだ。
ただし身体に害はない。
ヘルサレムズ・ロットのことを何も知らない、純粋培養の『外』の処女というのは、闇オークションでまあまあの値段がつくらしい。
そのため拘束以外は何もされなかったのだ。
おかげで、隙を見てどうにか逃げ出せた。
私がクラウスさんを怖がったのは、その人間離れしたおっかない風貌のせい。
大きな身体と怖い顔が、奴らを連想させたのである。
……あまりに失礼すぎて言えないけども。
今、クラウスさんは激怒のオーラを放つ。
その迫力に、嘲笑してたゴロツキどもも『!!』と沈黙した。
「かよわい婦女子に対する貴様らの非道畜生のふるまい! 断じて許すことは出来ぬ!
貴様らの死を持って、その大罪を購うがいい!!」
「えーと、観光客の組織的人身売買容疑なんだよ?クラウス?
おい、聞いてるか? 殺すんじゃ無いぞ!?
あとさあ! 君が想像してるみたいなコトはされてないからな、この子は!」
スティーブンさん、そういう言い方、かえって恥ずかしいから!
クラウスさん、私のために怒って下さるのはありがたいけど、あなた明らかに私の被害を拡大解釈してるからー!! 私、まだ清い身体ですからね!?
「おいおい。この兄ちゃんたち、ガキを連れてて俺らに勝つ気でいるぜ」
「それに免じて、俺らも殺さないでいてやるよぉ!」
「三人まとめて今夜のオークションに出す。靱帯ぶった切ってからな!!」
ゴロツキどもはゲハゲハ笑いながら、銃だの鈍器だの刃物だのチェーンソーだのを出す。
殺さないけど四肢が無事じゃ無い系だー!!
しかも仲間も呼んだのか、いつの間にか数が倍になってるしっ!!
「に、逃げましょう、お二人とも! 私は大丈夫ですから!!」
私は慌ててお二人の袖を引っ張ったが、
「やれやれ。舐められたもんだ」
「かかってきたまえ。彼女の受けた深き苦しみと痛み、晴らさせてもらう!!」
二人とも、完璧にやる気だった。
てかクラウスさん。あなたの中で私、どんだけアレな目にあってんすか……。