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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第1章 連れてこられました



 クラウスさんがスマホをしまう。

「異界生物と隕石による多重衝突事故が発生し、ギルベルトが道を変えるそうだ」
「じゃ、そこまで歩くか」

 迎えの車が遅れるっぽい。それにしても、渋滞みたいにサラッと言うなあ。
 あと、当たり前のようにスティーブンさんの家まで送ってくれるらしい。
 あのシルバーの高級車に乗ると考えるとワクワクする。
 よっこいせっと、立ち上がろうとすると、
「お手を」
 当たり前のように手を取ってくれるクラウスさん。
 どうしよう……好感度が爆上がりする一方だ。
 スティーブンさんがムッとした顔で見ていて、ちょっと焦った。

 だが公園を出ると、
「ハルカは歩道側を。何があるか分からないから、僕の腕につかまって」
 スティーブンさんもジェントル度が上がった!
 家主の顔を立てねばならぬ手前、ツッコミを放棄し恐る恐る腕に触れるが、
「触るんじゃ無くて、『つかまる』んだよ、ほら」
 肘を突き出された。さっきはンな気遣い、無かったでしょうに。
「そうそう。歩くよ」
「はい」
 そして私たちは三人で歩き出したが。

 ……気のせいかな。スティーブンさんの顔が若干曇ってるような。

 ま、まさかクラウスさんに私を取られそうになったと心配を!?いや……マジで無いわ。

「どうしたのだね、スティーブン?」
 もちろん、私が気づいた変化をご友人のクラウスさんが気づかないわけがない。

「ん? 何がだよ、クラウス。何でもないって。ほら、ハルカもちゃんとつかまって」
 スティーブンさんは笑って道を歩く。

 しかしお気遣いはありがたいけど、歩道側を歩けとか、大げさだな。
 いくらヘルサレムズ・ロットだって、たいていの大通りは生還率75%越えだ。
 そもそも、こんな高級店と食べ物屋だらけの通りにどんな危険があると――。

 ……ん? この道って……。

「こちらの方が近道だそうだ」
「分かった」

 クラウスさんに言われ、スティーブンさんが歩こうとし――止まる。

「どうしたんだ、ハルカ」

 根が生えたように道の端に立ち尽くした私に、スティーブンさんは不思議そう。

 周囲の音が大きくなったり小さくなったりする。心臓の鼓動が跳ね上がり、頭の傷跡がズキズキ痛んだ。

「ミス・ハルカ。どうしたのですか?」
 クラウスさんも私を見た。


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