第1章 連れてこられました
かくて十数分後、私たちは近くの公園にいた。
買い物の際の大荷物は、ギルベルトさんなる有能執事さんがスティーブンさん宅に運んでくれたそうな。
クラウスさんは彼が戻るまで待つそうだ。
私たちもそれにつきあうことになった。
普通なら『カフェで時間つぶしでも』となるだろうが、呪いゆえ私は飲食店に入れない。
なのでサブウェイでサンドイッチを買い、公園で食べている次第である。
「先日の案件は順調かい?」
「うむ。ザップがレオナルド君についてくれている」
「ザップ? なら、どうだかなあ」
「何を言うのだ。彼の実力に疑う余地など皆無ではないか」
「腕じゃ無くて性格の話だよ。現に――」
一応上司と部下という関係らしいけど、サンドイッチを食べながらかわす会話は砕けている。
スティーブンさんは終始、リラックスしたご様子だった。
……リラックス?
何でそんな風に思ったんだろう。まるで『普段』は違うみたいじゃないか。
首をかしげたが、私は考えるのが得意ではない。
それよりも。
カタカタカタカタ。
「ハルカ。また小刻みに震えてるぞ」
スティーブンさんが私の顔をのぞきこむ。
「――はっ! 失礼いたしました!」
「レディ。やはり私は離れていた方がいいでしょうか」
クラウスさんに言われ、罪悪感が肺腑をえぐる!
「ちょっと過剰反応じゃないか? さっきも言ったとおりクラウスは怖くないし、君に何もしてないだろう?」
最初はご機嫌だったスティーブンさんまでが、心配そうであった。
「いや何というか……」
「ミス・ハルカ。他にも気鬱の原因が?」
「何で私、お二人に挟まれてるんですか?」
ベンチがギッシギシ言ってる。
よくぞ三人座れたもんだ。しかし横幅はどうにかなっても、耐荷重はどうであろう。
特にクラウスさん側のベンチの足が、だんだん曲がってきてる気がして仕方ない。
マジでクラウスさんだけ別のベンチに座った方が、公共設備保全のため良い気がする。
それはさておき。何か知らんが私はお二人に挟まれている。
「君が端だと、姿が見えなくなる」
スティーブンさん、割とストレートな理由だった。
「我々が両側にいれば、狙撃や奇襲にも即時の対処が可能です」
クラウスさん……狙撃や奇襲を受ける心当たりでもあるんですか?