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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第1章 連れてこられました



「今日は買い物かね? とても楽しそうだ」
「そうかい? 実は彼女の――ハルカ? どうしたんだ?」

「あ……いえ……」

 私、お二人からすでに数メートルほど距離を取っていた。

 スティーブンさんは不思議そうに、こちらに近づき、

「呪いのことなんか気にするな――紹介するよ、クラウス。
 ハルカだ。事情あって、僕の家で保護している。
『常春病』ってマイナーな呪いにかかっているが、人体には無害だ」

「あの……その……」

「ハルカ。クラウスだ」

 私にはそれだけ。距離を取るとか、失礼なことをしちゃったかなあ。
 けど、そのデカい人は私の前に来てスッと手を出した。

「クラウス・V・ラインヘルツと申します。ミス・ハルカ。
 よろしければお荷物をお持ち致しましょう」

 うわ、紳士だ。 
 だが私は完全に顔を強ばらせ、スッと後じさる。

「どうしたんだい?」
 スティーブンさんも不思議そうにしていたが、すぐに、

「……なるほど! ははは! クラウス。君、怖がられたなあ!」

 なぜか上機嫌で笑い出した。
 私はスティーブンさんの背中に移動してきたのだ。
 彼は背中に隠れてる私を見下ろし、
「心配しないでいいよ、ハルカ。よく誤解されるけど、いい奴なんだ」
「は、はい……」

 だが私は依然、ガタガタ震えていた。
 スティーブンさん似の細身のイケメンを想像してたのに、こんなのあるか!
 でかい!! しかも超々強面(こわもて)!!
 絶対、親戚にアラスカヒグマがいるよ、この人!!

 殿方には分かるまい。ここまで高身長でガタイが良いと、本能的に恐怖心を刺激されるものなのだ。
 
「レディ。私は別にあなたに何の害意も……」
 クラウスさんは手を出した格好のまま、困惑気味。

「大丈夫だよ、ハルカ。こいつが何かしても、僕が守ってあげるから」
「? スティーブン。私が君の友人、ましてレディに手を上げるはずがないではないか」
「分かってる分かってる。でもハルカが怖がっているからね」

 震えてる私、戸惑うクラウスさん、上機嫌のスティーブンさん。

 なおさっき登場した執事さん。彼はムダのない動きで、スティーブンさんから受け取った荷物を、車に積んでいるところだった。

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