第6章 悪夢の外伝
そういうわけで、何だか分からんうちに私とスティーブンさんは仲直りした。
「ハルカ~」
今日もスティーブンさんが背中を撫でる。私は針は寝かせてる。
敵はイケメン顔を崩し、
「やっぱり信頼関係だよな。僕が撫でるときは絶対に針を立てないんだから」
手の平に私を乗せ、上機嫌で私を撫でる。
「そうですか」
無表情の黄さん。黄さんに触られてるときも針を寝かせてますが。
「だが甘い物をやりすぎたかな。最近ちょっと太って上手く丸まれないみたいでさ」
「そうですか」
スティーブンさんは私を手に乗せ、スマホで撮りまくってる。
「だがこの可愛いハルカとももうすぐお別れか。でもハルカが欲しがったら、ペットを飼うのもいいかもな」
「そうですか」
死ぬほどどうでも良さそうだな、黄さん!!
あとペットとか、いいですよ。以前にも動物化したことあるでしょう、私たち!
……。
…………。
そういえばこの展開に覚えがある。
「ところでお伝えしたいことが」
「何だ?」
確かスティーブンさんがオオカミになったときがあって、その後――。
「この獣化光線に接触感染性があることが判明しまして。
早い段階で細菌を洗い流せば感染を防ぐことは可能ですが」
「……おまえはどうなんだ?」
「私はちゃんと手を洗っておりますので」
動物に触った後は手を洗いましょう☆
…………
…………
「ふむ。困った」
「はは」
数日後。スティーブン宅には、困り切ったクラウスさんと、人間に戻った私がいた。
そして私たちの目の前には……。
『…………』
どん!
差し渡し5メートルはあろうかという、超巨大ハリネズミが鎮座していた!
細菌の突然変異だとかで、巨大化したそうな。
今は私たちに背を向け、すねて丸まっている。
なお顔の傷はそのままだが、ハリネズミなので逆に可愛かった。
クラウスさんは、
「ハルカ。すまないが、君にスティーブンの世話を――」
「動物園に売っ払っちゃダメですかね?」
……巨大ハリネズミがぶわっと針を立てるのが見えた。
以後、スティーブンさんの獣化が解けるまで三日。
私は超巨大わがままハリネズミの世話に、難儀することになったのであった……。
――END♡