第6章 悪夢の外伝
「君をこんなに小さくしてしまって……何が、『君を守る』だ……!!」
「その……確かに小さくなっていますが、その、中を確認した方がよろしいのでは」
黄さんの声。
「そうだな。見なくてはならないな。俺が追いやった結末だ」
「いえ、ですからそういう意味では……」
そして布を剥がすような音がし――光が差した。
私はビックリして、身体を丸めた。
「…………」
ずいぶんと長い沈黙があった。
「……何だ『これ』は」
「ヨツユビハリネズミです。ピグミーヘッジホッグとも言います」
「…………おまえ、ハルカが敵の光線を浴びたって」
「ええ。敵の獣化光線を浴びられました」
「つまりハルカは生きているのか!?」
「生きてらっしゃいます」
「戻るのか!?」
「数日のうちには」
はーっと安堵したような、長い長いため息。
「……からかっているんじゃないんだよな?」
「もちろんです。エサ……食事も人間と同じものを召し上がっています」
最初はコオロギやミミズを食わされそうになり、針を立てて激怒したら、やっとお菓子をもらえるようになった!
「人格や知性は?」
「獣寄りですが、維持されています」
いや、その言い方どうよ。ハルカさん、針を立てる。
「……本当に維持しているのか?」
私の恋人は疑わしげであった。
「ええ。簡単なコミュニケーションにも成功しました」
質問されてうなずいたり、答えのある紙を選んだりしたやつか。
だが眠い。ハリネズミは夜行性なのだ。ただ、スティーブンさんに私を認識してもらわねば。
私はクルッと防御態勢を解き、ふんふんと鼻を動かした。
私とスティーブンさんの目が合う。
「…………ハルカ?」
ものすごい疑わしげに呼ばれた。信じてないんですか。私ですよ。
あっという間に激怒したハリネズミハルカ。針を逆立て丸くなり、フシューッと鳴いた。
「……ハリネズミが針を立てるのは、防御なんだよな」
「ええ」
「何で僕に立てるんだ。やっぱりこれは、ただのハリネズミじゃないか?」
「いえ、能力は維持されています。冷凍食品を瞬時に解凍されましたから」
……私には周囲の能力を常温にするという特殊能力がある。
通常生活では『冷凍食品が一瞬で解凍出来て便利~☆』程度であるが。