第6章 悪夢の外伝
「疲れさせたのはあなたでしょうが……」
振り向いて渋々相手をすると、スティーブンさんはちょっと嬉しそうな顔になった。
年上の人なのに、何だか子供みたい。
「ハルカが勝手に遊びに行くからだろう?」
自分の方を向かせて、ちょいちょい髪や頬を撫でながら言う。
「だからですね。何度も何度も何度も何度も言ってるでしょうが。レオナルドさんは単なるお友達で――」
「他の男の名前は出すな」
いだだだだ! スッと真顔になって耳を引っ張らないで!!
理不尽な制裁に、私はますます機嫌を悪くする。
すると、そんな私を観察していたスティーブンさんは。
「…………今度、ゲームを教えてくれないか?」
「は?」
私は目を丸くした。スティーブンさんは気まずげに、
「そうすれば、休日に二人でゲームをして遊べるだろう?
わざわざ、他の奴の家に遊びに行く必要もない。その……PS何とかでいいから」
「いえ新しくNintend○ Switchを買って下さい」
きっぱり真顔で言うと、またギリギリと耳をつかまれる。いたたたた!
スティーブンさんはため息をつき、
「まあいいか。僕も少し大人げなかったしな」
今頃気づきましたか。いたたた。頭をチョップしないで。何で私が考えてることバレてんの!
「いいよ。今度、一緒にゲームショップに行こう」
「通販で構いませんよ?」
「…………偉そうだな。僕の金で買うんだけど?」
いたたたた。腕でしめつけて来ないで。
でも、今度のしめつけはやんわりで、私を優しくハグしてくれる。
「一緒に買いに行くのが楽しいんだよ。二人でランチをして、屋台で何か食べて」
まあ、その時間も、世界の危機でおじゃんになるか分からないけど。
そうこうしているうちに、スティーブンさんも眠そうにあくびをした。
「おやすみ、ハルカ……」
抱き寄せられ、私もギュッとしがみつく。
「おやすみなさい、スティーブンさん」
そしてキスをし、目を閉じた。
二人で出かける楽しい休日。
一緒に操作方法を覚え、二人でゲームをして過ごす夜。
きっとやってくる幸せな日に思いを馳せながら――。
――END