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【血界戦線】番頭さんに珈琲を

第6章 悪夢の外伝



 ヘルサレムズ・ロットの霧は深い。

 車はまっすぐにおうちに向かって行く。私は助手席で腕組みをし、眉間にしわを寄せた。

「なぜバレたのでしょう。GPSは確かに偽装したはず……」
「また使用制限をされたいのか? 自由にしたらしたで、ろくなことにスマホを使わないんだから。
 素人のアプリを勝手に仕込んで、もし情報を盗まれていたらどうするんだ」

 ブツブツブツブツうるさいなあ。だが敵のグチは続く。

「だが何よりも悲しいのは、君が恋人の僕にウソをついたことだ。
 ヴェデッドが来ている風を装って、姑息な真似をして遊びに行った。
 隠し事はしないと約束しただろう?」

 スティーブンさんはホントに悲しそうだった。

「本当に遊びに行きたいのなら連れて行ってあげたよ。
 ジャンクフードは身体に良くないが、好きだというのなら禁止というほど制限はしないさ」

 どうだかなあ。

「ハルカ? 反省しているかい!?」
「ははははい! 反省しています! 二度といたしません! スティーブンさんにウソをつき心の傷を与え、ご心労をおかけしたこと深く悔悟する所存でございまして!!」

「口だけの反省は、相手の心に響かないとよく分かったよ」

「えー」

 揚げ足ばっかりー。だが車は高級アパートメントの駐車場に入っていく。
 抵抗したが、私は車から引きずり下ろされた。

「あ、そういえば」
 ずるずると手首を引っ張って引きずられながら、私はふと言ってみた。
「スティーブンさん。もしかして、私がレオナルドさんの家に行ったことを一番怒ってたりします?」
 
 沈黙があった。

 だが私に背を向けたその一瞬、全身から膨れ上がるような殺気が広がった。

 部屋の温度が気のせいでは無く1、2度低下したな。

 ちょっと温度調節しといてあげよう、春の気候よ部屋を包み込めー。ついでに冷え切った恋人の心も温めて♡

「ハルカ」

 ……敵の声は、やはりマイナス50℃ほどあったが。

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