第6章 悪夢の外伝
前回のあらすじ。スティーブンさんに留守番を言い渡されたが、当然スルーしてレオナルドさんの家に遊びに来ています。
…………
夕刻。レオナルドさんは低い声で言う。
「ハルカ~、本当にそろそろ帰れよ。スティーブンさんが心配するだろ?」
「いや、ちょっと待って下さいよ。このステージをクリアしてから」
「じゃあ対戦で負けたら出て行けよ?」
「お? やる気ですか? 負けませんよ?」
「だから勝手に菓子を食うなよ! 行くぞ!」
迷惑そうにしてたレオナルドさんだが、何だかんだで遊びにつきあってくれる。
笑い声がこだまするうち、外も暗くなってきた。
「じゃ、そろそろ帰りますね」
さすがに危険センサーが作動し、渋々ながら立ち上がる。
「送ろうか?」
言いながら立ち上がるレオナルドさん。スティーブンさん宅は高級住宅街だしなあ。
「大丈夫ですよ。変な奴がいたら私の能力で瞬殺にしてやりますから」
「その能力が通じない奴の方が多いんだよ、ここは」
くっ。私よりここにいるのが長いからって兄貴面しやがって!
「しかし万が一、玄関でスティーブンさんと鉢合わせしたら――」
「気をつけて帰るんだよ、ハルカ」
微笑むレオナルドさん。瞬時に見捨てるなよ!!
そして私は玄関を開けた。お見送りのレオナルドさんに、
「また来ますねー」
「ハルカ! 近道しようとして路地裏入るんじゃないぞ!
誰かにつけられてると思ったら、すぐ俺かスティーブンさんに連絡するんだよ!
変な人にお菓子をあげると言われてもついていっちゃダメだからな!」
子供じゃないんだからさあ!
そこまで心配ならついてくりゃいいのに、と思いつつ手を振って別れた。
アパートの階段を軽快に下り、
「さてスティーブンさんが戻る前に、私も帰らないと」
鼻歌を歌いながら通りに出た。
するとまるで出るのを待っていたかのように目の前に高級車が止まった。
運転席側のミラーが開いた。
ドライバーは笑顔だった。
瞳にうっすらと殺意をにじませてはいるが。
夕暮れの中、しばしの緊張。敗北したのは私の方だった。
「あっらあ! 奇遇ですね、スティーブンさん!! ドライブですか!? やっだあステキ!!」
「乗れ」
相手の言葉は簡潔にして容赦がなかった。