第6章 悪夢の外伝
「てか、何で俺の家に来たんだよ」
「レオナルドさん。新作のゲームを買われたと聞いて」
不幸な事故から、ゲーム機を破壊され、一切の補償もされずという憂き目に遭ったと聞く。
だが一からコツコツとお金を貯め、ついに買い直したそうな。
「そうだけど! 貸さないからな!! 俺のだし!」
キッと私を睨みつけるレオナルドさん。
「それにゲームがしたいならスティーブンさんに買ってもらえよ。
あの人、そういうものを買う金なんていくらでもあるだろ?」
まあ確かに。
「実は一度だけ土下座する勢いでお願いして買って頂きましたが現在ゲーム禁止令が出ています」
「土下座……いや、禁止令って何で?」
「私にも皆目、理由の見当がつきません。
心当たりと言えば、夜のお誘いを無視して12時間ほどゲームに没頭したことくらいでしょうか」
「それだろ、絶対。てか分かってるだろハルカ……」
若干顔を赤くさせ、ため息をつくレオナルドさんであった。
だーって、久しぶりのPS4だったし、つい夢中になっちゃって。
「そういうわけで、おじゃまします」
「招いてないし。今すぐ帰ってほしいんだけど」
引きつり笑いのレオナルドさん。こめかみに青筋浮いてるなあ。
「まあまあ、どうぞ腰かけて下さい」
「俺の家だからね!?」
ちなみにレオナルドさんは休日を丸々ゲームに当てるつもりだったのか、室内はジャンクフードの山である。
「じゃあ後ろから見てます。見てるのも好きなので」
ぶっちゃけFPSはよく分からんし。ベッドに寝そべり、とっととスナックに手を伸ばす。
「勝手に食うなよっ!!」
「お金は払いますよ。スティーブンさんには、あんまりねだれないし」
セレブの恋人というのも面倒なもので、ジャンクフードを食べ物とも思っていない人種に、そういうのはねだりにくいのだ。
「…………」
すると、レオナルドさんはしばし沈黙し、
「早く帰りなよ」
はー、とため息をついて、私の隣に腰かけた。
「ういっす。お昼、私が作りますね。こういうのばっか食べてると、太りますよ?」
レオナルドさん、一見やせ型に見えるが食生活が最悪なせいで、腹に結構脂肪がついてるのだ。
「大きなお世話だよ。まったく、手がかかるなあ」
そう言いながらゲームを起動する。
ちょっとだけ苦笑しながら。