第6章 悪夢の外伝
※シリアス0の馬鹿話。毎度何かしらやらかす夢主と、彼女に構ってほしい番頭さん
■おやすみなお話
今日もイケメンが、世界の均衡を守るために出勤する。
「それじゃ、いってくるよハルカ」
ビシッとネクタイをしめたスティーブンさん。
柔らかな笑みを浮かべ、私をハグすべく腕を広げる。
だが。
「休日っ!! オフ!! おやすみ!!」
わたくしハルカ。玄関でクルクルと喜びの舞を舞っている。
「……いってくるよ、ハルカ」
仕切り直そうとするスティーブンさん。
私は聞いちゃいない。
「今日は休日。何をしよう。特撮ポーズの練習? サメ映画オールナイト? それとも……小豆(あずき)研(と)ごうか、人取って喰おか」
ディ●ニーミュージカルのノリで歌いまくる。
スティーブンさんは大きくため息をつくと、重病人を見るような澄んだ瞳で、
「錯乱するほど休日を喜んでくれるなんて、働かせすぎたかいがあったよ。
それと真顔で怖いことを言うのは止めなさい」
あなたこそ、真顔で怖いこと言ってないか?
でもスティーブンさん、無理やりに抱き寄せ、顔を近づけた。
「僕だけを見て」
「ん……っ……」
久々の休日に錯乱していた頭も、さすがに正気に戻る。
「……んん……」
目を閉じる。言われたとおりにスティーブンさんのことだけしか見ない。考えない。
そして、しばらくの時間が過ぎたのだった。
スティーブンさん、身体を離し咳払い。
「もちろん休日らしくのんびりしていて良いけど、決められた分の勉強はしっかりやるんだよ」
ううう。ライブラの新人構成員ハルカさん。
軽い呪いを背負っているとはいえ、超人秘密結社の中では一般市民同然なので、事務スキル向上のため勉強中なのだ。
あと術式や魔術は毎日やらないと勘が狂うので、鍛錬は日課だ。
「ミセス・ヴェデッドに君の監視も頼んでいる。あんまり彼女を困らせるんじゃないぞ」
ヴェデッドさんって人当たりはいいんだけど、二児の母だけあって監視の目が厳しいんだよなあ。
『お嬢様、お勉強お疲れさまです。タルタ・デ・サンティアゴを焼きましたけど、いかがです?』
と柔和な笑みを見せながら、ちゃんと私がデスクに向かっているか確認に来るのだ!